婚期を逃したくないアラサーの焦りでしょうか?」

今回、牧村さんのもとには、生涯を共に過ごしたいと思える同性の友人がいるものの、マッチングアプリで恋愛をしようとして失敗したという方からのお便りが届きました。「私のこの悩みは、『婚期を逃したくないアラサー』としての焦りなのでしょうか?」と悩む相談者さんに、牧村さんは自身が実践している「自分の内なる声を聞く練習」をもとにした具体的なアドバイスを送ります。


※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや

「そしてふたりは結ばれて、幸せに暮らしましたとさ!」……って書いて話を終わらそうとしてくるペンを自分の手に取り戻し、自分の人生の物語を書いていくための人生相談連載、『ハッピーエンドに殺されない』。

今回は、「タイムリミットまでにパートナーを得なければ幸せになれないぞ」っていうあの圧の話です。

圧って、安心にもつながります。

「あれがなければ幸せになれないぞ!」って圧は、裏返せば、「あれさえあれば幸せになれるんだ」って背中を押してくれる力だから。

圧のおかげで、自分で考えなくて済む。
圧のおかげで、自分の欲望に直面しなくて済む。
でも……。

圧してみたって、消えはしません。抑圧してる欲望は。
それは社会的に言って、とても出せない欲望かもしれません。こわい、きたない、はずかしい、自分なんかがおこがましい、って、思うものかもしれません。でも。

しょうがないじゃん。
あるんだからさ。

だからせめて自分だけは、ちゃんと感じてあげられる存在でありたい。
自分ちゃんの、欲望を。

今回は、「なんだか、なんらかの理由で自信を奪われていらっしゃるのかなあ」という感じの、ご自分のことを卑下なさる方の相談文と、対話形式でお送りしていきます。ふんわりキラキラした励ましとかではない、超具体的な、欲望していく練習の方法を。

それでは、さっそく、まいりましょう。

牧村さん、こんにちは。葵といいます。
20代後半のしがない会社員です。
以前牧村さんに、傾聴のお時間をいただいたことがあります。牧村さんにとっては数えきれない相談者のうちの一人だと思いますが、私は今も、その時いただいた相槌や言葉ひとつひとつを大切に覚えています。その節は有難うございました。
今一度、相談の機会をいただければと思い、筆を取らせていただきました。

葵さん、こんにちは。
もうこの書き出しだけで、相談内容に入らなくても感じるものがあるのですが、とにかく「傾聴」ということで、まずはお話をお伺いします。

私は今、生涯を共に過ごしたいと思える同性の友人がいます。

はい。

相手も少なからず似た思いを抱いてくれているようです。けれど彼女は恋人ではなく、性的な感情を抱かない相手、なのです。

「ようです」か。話し合いはなさっておられないのでしょうか。「性的な感情を抱かない相手」だから?

牧村さんからすれば、それはノンセクシュアルなのではないの?とお思いかもしれません。

いいえ。思いません。
人のことをカテゴライズするのは余計なお世話なので、わたしは、一切しません。 自分が自分を何者だと感じ、どんな言葉で表現するのかは、その人が選ぶことなので。

ちなみに「ノンセクシュアル」については、本連載で過去に3回取り上げています。cakesで、略称「ノンセク」と検索すると出てきます。「他者を性欲の対象としない」というあり方を、この言葉で表現することがあります。

ですが私は過去に、男性や女性に性的な欲求を含めた愛情を感じたことが多々あるのです。今までにあげた問題とは別に、私は人生における「軌道」に乗らなければと焦る気持ちを持っているのも事実です。幸運なことに都会で育ち、周りから結婚しろだのとやかく言われたことはないのですが、自分の中の「正しくいなければ」という気持ちが焦らせます。

都会にも「結婚しろ圧」は全然存在すると思うのですが、まあとにかく。

長らく恋人がいないから自分の中の性的志向が揺らいでいるのだと思い、マッチングアプリに手を出したのですが、自分が性的に見られていることに耐えられず失敗しました。(初回で断りもなく身体を触られたり、自身の胸や顔を含む容姿について褒められることも不快でした)

「性的志向」とお書きになりました。
細かいようですがこれは、一応、誤字とされています。 性愛の対象を求める気持ちが、どんな性のあり方をした人に向かうのか……同性、異性、両性、それとも、性別に関係なくなのか、なんなのか……ということは、「志す」ものではない、意志の力で変えられないものだからだ、という考え方からです。

「性的指向」と表記することになっています。同性愛など、社会権力によって望ましくないと判断された性のあり方が、「意志の力で変えられるはずだ」と矯正対象にされた歴史を反省してのことです。「志向するものじゃないから意志で変えられないんだよ。嗜好でもないから食べ物の好みみたいに言わないで。それぞれの指向なんだよ。尊重しあおうね」みたいな話。こちらの記事でお話している歴史ですね。

でも、こんな暗い歴史だからこそ、踏まえた上で乗り越えていきたいよな、と、わたしは思っていて。あなたの場合、あえて「性的志向」、これが一般的に誤字とされるものであっても「性的志向」。自分が性的に何を志しているのかということに、もっと自分で敏感になるといいのかもしれないと思いました。

だって、「恋人がいないから揺らぐ」ですって? こんなことおっしゃるんだもの。あなたの性は、恋人含む誰にも決定づけられるものではない。あなたはあなたの肉体を生きています。所有されるものでも、分類されるものでもない。あなたがあなたの肉体をもって誰とどう関わるかという決定権は、ただ、はじめからもうそこに、あなたと共にあるものです。だからほら、ちゃんと、自分で望んでいないことだから、「性的に見られることに耐えられない」っていうことを感じることができたわけでしょう。

マッチングアプリにも色々ありますけど、出会い目的のやつはそもそも、アプリに見た目とプロフィールを上げた時点で、性的に見られますからね。シンプルに、嫌ならやらない。嫌なことを言われたら嫌だとはっきり意思表示する。嫌なことを強要されたらアプリとか警察とかに通報していい。「自分でマッチングアプリを使っておいてなんだよ」とか言われるいわれはない。関係ない。

嫌だ、ときっぱり伝えたほうが親切だとすら思います。特に男性ジェンダーを生きてる人なんですけど、「女性は受け身だから! 僕が積極的になってあげなきゃ! かわいいねとか、スタイルいいねとか褒めてあげなくちゃ!」って圧を自分にかけて空回りしちゃう人とかいるので。それで女性ジェンダーは曖昧に微笑みながら内心で嫌だなと思うだけ、男性ジェンダーは「あれれ反応悪いなぁ??」とか思いながらもっともっともーっと頑張ったのに帰りに女性にブロックされてた、とかなると、お互いにマジで不幸。わかりあえぬ。そうやってTwitterとかによくある、あの、男叩き/女叩きアカウントとかが荒れていくので。

と、いうわけで。

「一緒に暮らしたいと思う同性の友人がいる。でもその友人とはちゃんと具体的に話し合ってはいない。ただ『同じ気持ちを抱いてくれているようです』という感じがする。そんな自分は恋人がいないから揺らいでいるのかなと思ってマッチングアプリを使ってみたけれど嫌だった」という話に聞こえていますが。そりゃ当然、嫌ですよね。最初から望んでないもんね。

私のこの悩みは、「婚期を逃したくないアラサー」としての焦りなのでしょうか?それとも、いい歳をして恋愛が分からないふりをしている厨二的思考なのでしょうか?
このままでは、友人にずるずると甘えてしまいそうで怖いです。
沢山の相談が来ていると思います。
目を通してくださり、有難うございました。 今後も牧村さんの連載を楽しみにしています。

……というわけで、全文そのまま掲載させていただきました。

では、最初に思っていたことを書きます。

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

lttms なかなかシビアなアドバイスなんですが、実践的で良いなあ 2ヶ月前 replyretweetfavorite

kurimatu044 牧村朝子 @makimuuuuuu | 2ヶ月前 replyretweetfavorite

granat_san タイトルから想像しなかった内容。すごくよかった。 2ヶ月前 replyretweetfavorite

koropanda1 後半に琴線じゃかじゃか掻き鳴らされてしまった。。 2ヶ月前 replyretweetfavorite