口の中の終わりなき戦い

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性や恋愛について考えるこの連載。40歳を過ぎると歯が弱くなるから、歯貯金をしたほうがいいという話を聞いた森さん。歯の定期検診に行っているし、私は大丈夫だろうと思った矢先、歯茎の調子がなんだかおかしい。もしかしたら歯が悪い?と歯科医院へ行ってみると......。

「40歳を過ぎたら歯貯金をしたほうがいい」

というようなことを、アラフォーの女性著名人が語っていた。「40歳を過ぎるととたんに歯が弱くなる」というのが根拠らしい。その時は「歯貯金ねー」と一笑に付していたのだが、数日後に知人女性から「歯の治療に数万円かかった!」と聞かされたのだ。具体的には1回の治療で6~7万円かかり、トータルで10万円は超えたという。身近で歯貯金の重要性がリアルになった瞬間である。が、人は自分だけは大丈夫と思い込む。だって私は半年に1回は歯の定期検診に通っているし大丈夫に決まっている、と口をあけて鏡を見たら、口内炎がひとつできていた。その口内炎の位置が問題だった。頬側ではなく歯茎側なのだ。2週間経過しても治らない。これはもしかしたら歯? 歯が悪いの?

私はいつもの歯医者ではなく、一般歯科に加えて口腔外科を標榜している歯医者に行ってみた。歯科医師いわく、

「以前治療した歯の根元が膿んでいます。根管治療が必要です。場合によっては抜歯です」

つまり歯の根元が膿んでしまい、歯茎内におさまらない膿が外に出て小さな水膨れのようになっているのだ。それはさておき抜歯? 永久歯を抜歯したらどうなるの?

「入れ歯かブリッジかインプラントです」

と歯科医師。入れ歯もブリッジも嫌だ、となるとインプラント一択。インプラントって数万円じゃなくて数十万円では……。私の顔がよほど青ざめていたのか、歯科医師は「まだ抜歯と決まったわけではありません。できるかぎり既存の歯を残す治療をしましょう」と微笑むではないか。「ただし歯の根元にひびが入っていたら抜歯」と釘を刺された。

いきなり何十万円の出費。歯貯金なんかしていないし、そもそも歯にお金をかけるという意識がなかった。せいぜい定期検診とクリーニングとホワイトニングの歯磨き剤とマウスウォッシュくらいだ。出費にして月に数千円。それがいきなり数十万円の出費(の可能性)。歯貯金以前に歯節約をしなくては、とその日の夕食は質素なものとなった(旦那さん、ごめんなさい)。

治療中の精神的ショック

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森 美樹
新潮社
2021-06-17

この連載について

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アラフィフ作家の迷走生活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや愛への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。アラフィフの今、自分自身の経験を交えながら、女性の性や愛を追...もっと読む

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コメント

hananonioi1 キスできないなんて、人生の楽しみをひとつ捨ててしまっている。口腔ケアは大切ですね。 2ヶ月前 replyretweetfavorite