表具店の激シブ職人父子に来てもらってDIYに目覚めた話

今の家に住んで5年が経つという牧村さん。障子がボロボロになってしまったため、張り替えをすることに。ネットで簡単に業者さんを探すことができる現代ですが、牧村さんが出会ったのは隣町で表具店を営む職人父子でした。老舗のご主人が語った深刻な職人不足のお話に、牧村さんは何を思うのでしょうか。


※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや

金物屋さんと表具店さんから、マジで良いことを教わったのでお伝えします。

こんにちは。20歳で家賃5万の部屋で一人暮らしを始めた時の喜びが忘れられない、牧村朝子、34歳です。

文筆家です。7年目となる人生相談『ハッピーエンドに殺されない』には、「実家出たい」というご相談を定期的にいただいております。こちらの『コロナで無収入。同居の母から暴言。家を出たいのにお金がない』とか。

ああ無情。しんどい時ほど金がない。
金がないからしんどいのかな?

順番はまあ置いといて、生きていくテクの話をします。
まずは、こんな経験の話から。

人生で、7回くらい引っ越ししてます。今の物件に住んで5年目。5年も住むと色々ガタが来るもので、最もやばかったのは、障子です。お化け屋敷の障子かよ、ってくらい、ガタガタのボロボロになっていました。

わたしは思いました。

「日本で生きていく技術として、障子の張り替えは身に付けておきたい!」

……という志はあるのですが。性格が、めんどくさがりです。

なので、「破れたところだけ切り取ってつぎはぎの紙を当てる」っていう方法でなんとかしのいでいました。結果、余計にみすぼらしい見た目になりました。

マジでこれどうしようかね。

って思いながらZOOMの背景をごまかしていたある日。戦前の生活について原稿を書いていて、「表具店」のことを知りました。不勉強で存じ上げなかったのですが、「表具店」とはつまり、「張るプロ」。ふすま、屏風、障子、掛け軸などを、すっごいきれいに張るプロ集団のみなさんです。

そういえば、隣町に、「表具店」っていう看板を見たな。

そう思って、電話してみました。
そう。電話です。ネット予約とかやってないところだったので。
これが大事なポイントだったと、後に知ることになるのですが、とにかく。電話で、表具店に障子の張り替えを予約しました。

すると果たして、めっちゃ渋い職人父子が、「昭和●年創業」って誇らしく書いてある車で駆けつけてくれました。

「これもう、障子、歪んでて、動きにくくてすいません……」

というわたしの目の前で、ガタガタ障子を苦もなく音もなくスッと外す、おやっさんの手つき。息子さんは言葉少なに、

「やっときます」

の一言を残して去っていきました。そしてその日のうちに、工房から戻ってきた障子は、ピンピンのスイスイに修復されていました。すごかった。

激シブやんけ。

おれも激シブになりたい!

そんな情熱に駆られ、商店街の老舗、いつもご主人がお一人でお店番していらっしゃる金物屋さんに向かいました。行ったことないお店でしたが、「表具店の職人さんに来てもらったら仕事ぶりが激シブだったので自分でも工具とか揃えたくなった」と言ったら、こんな話をしてくださいました。

—今はねえ、職人不足が深刻なんですよ。街を歩いても、表具店とか、工務店とか、木工所とか、そういうところを、昔よりも見かけなくなったでしょう。

で、リフォームとか修復とか、みんな業者をネットで調べる。スマホでザーッと一覧にして、価格順に並べたりして、それで、業者の住所は見ないでしょう。

なかには、お金を取るだけ取って、誠意も技術もない仕事をする業者もいる。そういう業者が増えていますよ、ずっと不景気ですからね。だから職人に仕事を頼むときは、ちゃんと地元に根を張って、住所を明らかにしている事業所なのかどうかを見た方がいい。そういうところは逃げも隠れもできないわけですし、誠実な仕事を重ねているものです。

心配してますよ。あと15年くらいですかね、今建ってる建物にガタが来たとき、まともに直せる職人はもうほとんどいない。そんな世の中になってるんじゃないかってね。

「父の仕事は息子が継ぐもの」ってプレッシャーから、今の人が自由になったのはいいことだ。しかしね、そうなってみたらね。もう誰も、職人の跡を継がない。若いうちから少ない稼ぎで、親方からどやされて仕事を叩き込まれる。そんな修行期間が10年も続く。そりゃあ、いやがりますよ、若い人たちは。10年もありゃあ、会社に勤めて昇給を狙いたいって思う人の方が多いんでしょうね。

その結果、面白いことが起こっていてね。親父さんの跡を継いで職人になる息子が減ったのと反対に、DIYをやる女性が増えているんです。

プロの職人になる女性も増えてますよ。見せてもらうとね、仕事が細やかで、美的センスも持っている。クロス職人とか、タイル職人とかね。そういう才能が生きる世の中になってます。

……そう言われてわたしは、いろんなことを思い出しました。

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

ashi_tamago 釣り用の畜光パウダーとかあるのね!!これを探してた!!https://t.co/HVIE4oMXjm 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

kaizawasan 確かに指摘してる層のDIY動画、Youtubeでめちゃくちゃ増えてるような印象 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

studiobabyroom 生きる技術、なんていい言葉 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

JohnBlackSolve 私もDIY楽しいなーって、次はダイニングテーブル作るつもり。 約2ヶ月前 replyretweetfavorite