アメリカで盛んに伝えられるコロナ禍のストレス対処

何かと気づかぬうちにストレスにさらされがちなこのコロナ禍。アメリカでは「やってはいけないこと」だけでなく、ストレスから身を守るために「やったほうがいいこと」もしっかりと伝えられていると言います。

積もるストレスをどうやって逃がしていこうか

2021年7月、落ち着いてきたかと思われたCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、また世界各地で感染者数の急増をみています。

予想されたことではありますが、変異株が猛威をふるい経済の停滞から抜け出せないという大きな問題をどうするかが、いずれの国でも感染抑止と同時に無視できない課題です。でも同時にこれも予想されたことながら「強いストレスから心身をどう守るか」も、さらに個々人の日常レベルで重要だと認識されています。

私の住むエリアでは、2020年暮れくらいからストレスから心を守る重要性が学校やコミュニティで盛んに指摘されてきました。ちょっと感心したのは私がワクチンの第一回目接種を受けた時に、特殊コーティングされた「濡れても破けない、折れたりしにくい」手帳サイズのカードを渡されたことです。あまりに立派なカードなのでいまだに捨てられないのですが(まんまとあちらの思うつぼ)、それには「COVID-19パンデミックのストレス対処のコツ」という見出しがついています。

精神を強いストレスに晒さないために、
「メディア情報から離れる時間を取りましょう」
「家族や友人と話しましょう。ソーシャルディスタンスを取っていても、ちゃんと繫がれます」
「体が悲鳴をあげてませんか? ストレスの兆候を見逃さず、瞑想・祈り・助けが必要な人に手を貸すなどして、精神をリフレッシュさせましょう」
と書かれています。

ある意味とても当たり前のことですが、強いストレスをうまくかわしきれないと、今までだったら当たり前にしていたであろうこんなこともできなくなってしまうのでしょうね。

さらに何をすればいいか、という案も簡潔に書かれていてわかりやすいカードです。

「太極拳やヨガをする」「昼寝する」「運動」「ペットと遊ぶ」「瞑想」「アロマセラピー」「深呼吸」「音楽を聴く」「感謝していることを書き出す」「散歩する」

結構日常の短時間でできてしまう、でもやってみると確かに気分が変わることですよね。こうやって社会全体で「ストレスが高い時期、一人で抱え込まないで」と伝え合うのは大事だし有り難いことだなと思っています。


実際に私の家族で考え、行なったこと

COVID-19のパンデミックと言われ始めてからの夫のストレスは、当然ですが相当なものだったと思います。

私の夫は集中治療室ICUという場所の専属医ですが、この1年半、普段以上に神経を張り詰めて防護服を使ったり処置のタイミングの微調整をしたりだったのだと思います。私は疲れが溜まっていくのが明らかな夫に対して、家に帰ってきたときにできるだけ「日常」に戻れるよう、ストレスを減らす手助けを考えるばかりでした。

先日夫に尋ねたら、パンデミック以前は9割以上の患者さんを集中治療室から一般病棟へ戻れるようにしていたそうです。しかしこの一年間で大分医療側の知識も対応策も増えてCOVID-19患者の救命率が上がっていても、今はまだ以前のようには患者さんを助けられない、といいます。助けられない患者さん達を看続ける医療者が精神的に追い込まれるのはある意味避けられないことです。

夫のいる集中治療科では基本的に「しっかり休む」ローテーションが組まれています。心身に高い負荷がかかるからでしょうが、2〜3週間働き1週間休むというようなリズムです。その休みを使い、夫のストレス発散を目指すこと。同時に周りの人に感染拡大などの要らぬ心配をかけない方法を考えること。それを両立させることがひとつの目標となっていました。

既に夫は毎日の運動を欠かさないこと、読書をしたり猫の相手をしたり、映画のストリーム配信を家族で見るなどのストレス対策はそれなりにしていました。そこでさらにもう一歩先のストレス解消と考え、私達はアウトドアのハイキングやキャンプをする機会が増えました。もちろん自治体・国の規制の範囲内ですし、アメリカはキャンプ場1つ取っても隣のテントサイトの人が直接は見えないくらい離れているのが普通なのです。

アメリカでのロックダウンで求められていることは、日本の緊急事態宣言時と似たようなマスク着用、ソーシャルディスタンスを保つ、不要な外出を避けるなどでした。ただそれと同時に、上で紹介したようなヨガや瞑想、散歩といった「やってもいいこと」、いやむしろ奨励されることも大切なこととしてしっかり伝えられていたと思います。

ロックダウンで気分転換に出かけられる場所がまず少ないので、「奨励されること・場所」は「自然の中に行く」というほぼ一択になりますが。そんなわけでアメリカは去年からキャンプやアウトドアがブームです。

「やってはいけないこと」だけでなく「できること」に注目する

一概にストレス発散とは言っても、どの、どんな方法が良いかは人によるのかもしれません。また私の住むアメリカでは自分の車での移動が原則なので、そのままでは都市部にお住まいの日本の方には当てはまらないかもしれません。

残念ながらウイルスを一斉に排除!というような魔法はありません。だからそろそろ「心を逃がす」術を少しずつ練習する時期かなぁと思うのです。自分や家族はもちろん、周りの人の健康も守りながらできることを増やすのは、自分のための優しさであり、出かける必要がある人を理解しようという優しさにもなるのではないでしょうか。

ルールで縛るのは実は簡単なのです。難しいのはそこから「できることをどうやって増やすか」。

覚えていないでしょうか、細かく厳しい校則は校則違反の生徒を増やすだけだったことを。人間って縛られたら暴れるものだと思うし、やってはいけない、ばかりに目が向くと人は怒りっぽくなります。でもその中で「あ、これは三密じゃないし、ソーシャルディスタンスもマスクルールも守ればいいんじゃないの?」というようにやっても大丈夫なことが見えてきたら、社会全体で少しずつまぁるく優しくなれるのではないかなぁと思うんです。みんなで「ルールは守りつつどこまでできるか?」を楽しく探す方が生産的ではないでしょうか?

これまでの世界の経験・科学の知見を合わせると、本当のStay homeはずっと家に閉じこもりなさいではないと思いますし、ちゃんと「翻訳」されなければと考えています。もしずっと閉じこもりなさい、なら昔の蟄居(ちっきょ)という刑罰と一緒です。原則を今一度考えてみると、Stay homeの意味するところはむしろ「友達とイベントやレジャー施設にいくなど、不要不急で三密になるようなことは控えてね」ではないかなと私は受け取っています。

今さらに思われるかもしれませんが、1度騙されたと思って「安全に、できることを増やす」試みをやってみて欲しいのです。時間は多少かかりますが、できることが増えたらいつかストレスは減っていく、と信じて。

そして自分達のストレス軽減を目指し、その先の安全な方法を探るときにやっぱり大事だと思うのは,周りの人のストレスを増やさない思い遣りです。卑近な例で言えばマスクを着けるか着けないかは、周りの人を思い遣っているか、だとも思うのです。

そういえば日本の友人で思いがけずお子さんが濃厚接触者になった方がいらっしゃいました。その方は「検査も陰性だったし元気だった。職場規定などでも休まなければいけないわけではなかったけれど、家族全員でできるだけ家の中で過ごした」と仰っていました。万が一を考えての友人の選択・行動は、本当に周囲に優しくて素晴らしいなぁと思いました。

いろんな意見はあるでしょう。マスクや外出禁止のように「押し付けられるのは嫌だ」という方もいらっしゃるでしょう。でも判断基準の中心を「相手の気持ちも考える」にする、というのは素敵なことだと思いますし、ひいては他人が自分に優しくしてくれることでもあるかなと思います。

今まさにストレスの高い日々再び、という感じですが、そういう時こそ逆転の発想でストレスを逃がす簡単な行動を探してみるのはどうでしょう。そうやって安全にできることを少しずつ伸ばすことが、思いやり合うコミュニティを作るために大事なのではないでしょうか。


たなかともこさんのnoteはこちらから。

この連載について

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コロナ禍の楽観主義

たなかともこ

アメリカ在住の元医師が考えるコロナ禍での生活のヒント。日々、重症患者と接触する集中治療医の夫を持ち、感染がなかなか収束していかない社会で、どういうことに気をつけ、何を考えて生活しているのか。コロナ禍の不安といかに向き合い、前向きに生き...もっと読む

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コメント

irasally "自分や家族はもちろん、周りの人の健康も守りながらできることを増やすのは、自分のための優しさであり、出かける必要がある人を理解しようという優しさにもなるのではないでしょうか" https://t.co/7DX2ILiapO 1日前 replyretweetfavorite

naka3ws ストレスから身を守るために「やったほうがいいこと」… これを伝えることも大切なこと https://t.co/c2aTGc5YiD 3日前 replyretweetfavorite

Rubby90330934 「心を逃がす」 まだまだメンタルヘルス後進国の日本。 休むのその先、いかに休むかも考える時期が来てるのでは? 3日前 replyretweetfavorite

RyotaShimadu 「できることに注目する」って大事だなぁ。ほんと、そう思う。たなかともこさんの連載* 3日前 replyretweetfavorite