料理において「水(気)を切る」というのは必ず出てくる工程。洗った野菜や茹でた麺類の水気を切ったり、という場面で活躍するのがザルです。鍋やボウルは他のもので代用可能ですが、ザルの機能は他に代えがないもの。今回のテーマは台所に欠かせない調理道具の一つ「ザル」です。
包丁であれば「よく切れる」、まな板であれば「刃をしっかりと受け止めてくれる」など良し悪しの基準がありますが、料理に慣れない人から見るとザルは「なにを基準に選んだらいいのかわからない」という調理道具だと思います。
よいザルに求められる要素は大きく2つ。
・水気がよく切れる
・洗いやすい
当たり前のようですが、掘り下げて考えてみると意外と達成するのが難しいことがわかります。ザルの材質や種類をおさらいしながら、あらためて考えてみましょう。
両立しづらい水切り性能と洗いやすさ
写真のザルは「盆ザル」という名前で、昔ながらの竹製です。深さがある「椀ザル」や米とぎ専用の「米とぎザル」、洗った野菜などを入れておく「水切りザル」など様々な製品があります。
竹製のメリットは竹が水を吸うので、水はけがいいこと。熱にも強いので、麺類を茹で上げるさいにもよく使われます。デメリットは水を含むのでしっかり乾燥させなければいけないこと。また、網目に食材が詰まりやすい点、洗剤でゴシゴシ洗うと寿命が縮むので、油物には適していないなどが挙げられます。
竹製は寿命が短く、高価なので、現在の主流はステンレス製に変わりました。一般的に「ザル」と聞いて思い浮かべるのはこんな形のザルでしょうか?
これは「足付きザル」という製品。ザルの真ん中にある金属のリングが足と呼ばれる部分です。流しにザルをそのまま置くのは衛生的ではないことから、こんな形になっています。
ステンレス製のザルは匂いが付きづらく、形状も様々なので、選ぶのであればベターでしょう。ステンレスザルは網目にも注目してください。ザルの網目は「メッシュ」という規格で表されます。これは1インチ(約2.4cm)にマス目がどれだけ並んでいるかを表すもので、数字が小さいほど目は粗くなります。
写真のザルは12メッシュで、比較的マス目が大きめです。大きいので水切り性能は高いのですが、例えばこのザルでキャベツの千切りの水気を切ると、穴に食材が詰まったりします。穴が大きいザルで出汁を濾しても、鰹節が混ざってしまったりします。このように水切り性能と作業性の両立はなかなか難しいのです。また、目が細かい網はワイヤーが当然、細くなるので耐久性も落ちます。
次に人によって意見が分かれるのが「足付きか、そうではないか」という部分。足がついていると便利ではあるのですが、その部分に食材が溜まり、洗いづらい、という弱点があるので、僕は基本的に足付きのザルをオススメしません。
こんな製品も見たことないでしょうか? これはパンチングボウルやパンチザルと呼ばれている製品で、通常のザルよりも目詰まりしずらく、洗いやすいというメリットがあります。
デメリットは「水切れが悪い」こと。均一な穴が開いたザルに食材を入れると表面張力が働き、水が流れにくいのです。また、米粒のような細かいものを扱うと引っかかったり、逆に流れてしまい、出汁を濾すという作業にも向きません。
他に100円均一で売っているようなプラスチック製のザルもよく見かけます。プラスチック製は傷がつきやすいのがデメリット。傷がつくとそこで雑菌が増えるので、古くなったプラスチックボウルは交換する必要があります。また、プラスチックは脂肪に似た炭化水素素材なので、油汚れや洗剤が残りやすい=衛生的な状態を保てないので、やはりオススメはしません。
このようにザルを見ていくとそれぞれ一長一短があり、選ぶのがなかなか難しいところです。とはいえ、台所に一つ「これだけ持っていれば大丈夫」というザルがあります。