和食が辛くなる日

今回の「ワイングラスのむこう側」は料理のお話です。肉ブームと激辛ブームの結びつきから、和食の未来を考えます。

ブラジル料理は辛い?

いらっしゃいませ。 bar bossaへようこそ。

ブラジル料理、食べたことはありますか? どんな味か、知っていますか? 今、「辛いのかな?」って思った方、何割くらいいるのでしょうか。今日はその話から始めます。

僕、都内のブラジルレストランで2年ほど働いていたことがあるんですね。スタッフの7割くらいがブラジル人で、僕は毎日、ポルトガル語やブラジル料理、あるいは「ブラジル料理を食べにくる日本人の客層、雰囲気」を知るために、働いていました。

そこでは、ブラジルのレストランから引き抜かれた腕の良い料理人も働いていたし、モデルをするために日本に来たんだけどそれだけで食べていけないからちょっとバイトでって人もいたし、日系ブラジル人やその配偶者も働いていました。

僕はポルトガル語を勉強していたので、ブラジル人とはできるだけポルトガル語で会話をしていたのですが、必ず彼らに質問されることがありました。「どうして日本人って、『ブラジル料理って辛いの?』って質問するの?」というものです。

確かに接客をしていたら、必ず「この料理は辛いんですか?」って聞かれるし、レストランの外でも「ブラジル人です。ブラジルレストランで働いています」って自己紹介すると、必ず「ブラジル料理って辛いんですか?」って聞かれるそうなんです。ちなみに今でも、bar bossaでこの頃の話をすると、たまに聞かれます。

ここまで書いているからお気づきでしょうが、ブラジル料理って辛くないんです。日本人が、「辛いんですか?」って質問するのは、きっと「中南米の料理は辛い」という先入観があるからでしょうね。そしてその理由は、「メキシコ料理が辛いから」、ですよね。中南米ってたくさん国があるのに、なぜか一番最初にメキシコが思いつく人が多いんです。

日本人が大好きなアメリカのドラマや映画には、しょっちゅうメキシコ人やメキシコ料理が登場します。日本でも、タコスとかブリトーとかナチョスとか、アメリカ経由のメキシコ料理がたくさん入ってきていますよね。たぶんその影響で、「ラテンアメリカの料理は辛いもの」ってどうしても感じてしまうんじゃないかと思います。他の地域の人たちからすると、中国人と韓国人と日本人が全部同じに見えてしまう問題と同じです。

そういった話をブラジル人に説明したあとに、「あなたたちも、アメリカ経由のブルース・リーを見て、日本人は強いと思っているよね」ということを話します。そうすると大体の人は「そうかあ、なるほど」と納得してくれます。こういう誤解とか偏見って、種明かしをすると、「なるほどなあ」ってみんな笑いあえたり、「そういうの、お互いいけないよね」ってわかりあえたりします。

日本の肉ブームは激辛ブーム?

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

大人の条件

林 伸次
産業編集センター
2020-11-13

ケイクス

この連載について

初回を読む
ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

10ricedar 完全に「つらい」と読んで読み始めました 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

likaco_m ブラジル料理は辛くないし一度だけ食べたレバノン料理に似てた https://t.co/NGah99UTqy 2ヶ月前 replyretweetfavorite

likaco_m https://t.co/NGah99UTqy 2ヶ月前 replyretweetfavorite

bar_bossa ブラジル料理って辛いと思いますか? 2ヶ月前 replyretweetfavorite