「いつから賛成になったの」
さて、このタイトルやイラストやイントロ文を目にして、この人はまだ東京オリンピック開催に反対しているのか、もういいじゃないか、どうせ、もうやるんだからそれでいいじゃないかと、ちょっとグッタリする人もいるのかもしれない。いや、でも、どっちかっていうと、グッタリしているのはこっちのほうだ。「いつまで開催に反対してんの」と言われると、「いつから賛成になったの」と聞き返すようにしている。そう聞くと、おおよそ「いや、別に賛成ってわけじゃないけど……」と返ってくる。賛成ってわけではないけど、もうしょうがない、というのである。
「選手は悪くない!」を盾にする
少し前に、テレビで、油のこびりついた換気扇やお風呂の排水溝など、家のあちこちを掃除する業者の様子を見た。家にある掃除用具ではどうしても落とせないしつこい汚れを、専門の器具や液体を使ってテキパキと落としていく。とはいえ、新品と同じような状態には戻せない。「ここはちょっとどうしても(汚れが)残っちゃいますが……」と申し訳なさそうに言うと、お客さんは「いえいえ、そんな。ありがとうございます」と返していた。着実な仕事をした上で、できなかったことを伝える誠意を前に、「ダメダメ、もっとやってくれよ!」と言うお客さんはおそらくいない。
まだ完璧な状態ではないのにオリンピックをやるなんて、と言っているわけではない。不安要素や「それどころじゃない」と思わせる案件が毎日のように積み上がっているのに、「いや、でも、やります!」と言うから反対する。油まみれの換気扇を見て、汚れを落とそうともせず、むしろ別の油汚れを塗った上で、「でも、回るはず。壊れてはいない」と言いながら、その上、高額請求を吹っかけてくる。今回のオリンピックってそんな感じだ。言ってもいないのに、運営側は「選手は悪くない!」を盾にする。選手は悪くない。悪いのは、オリンピック開催を優先するあまり、新型コロナ対応が後手後手にまわり、選手を迎え入れる段階になっても、空港で来日選手の陽性が発覚したにもかかわらずその濃厚接触者を空港で止めず、バスで送り届けた合宿先で別の陽性者を出してしまうなど、自分たちで言い張る「バブル」を自ら積極的に壊すような人たちである。
「全人類の努力と英知によって難局を乗り越えていける」
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