最終回】3年前に妻が僕宛てに送ってきた熱烈なラブレター

「Baby Don't cry 〜赤ちゃんと俺とキレ妻と〜」は今回をもって最終回となります。東大卒弁護士という華やかな肩書きと裏腹に、常識が通用しないぶっ飛んだ奥さまと、4歳になった息子を育てる樋口毅宏さんの2019年12月31日の日記をご堪能ください。

2019年12月31日

2019年、今年もあっという間に過ぎた。

かずふみは4歳になった。言葉を覚えていくだろうか。ちゃんと話せるようになるだろうか。区の療育と、赤十字の小児保健と、幼児教室の3本立ては続く。

ふさこは仕事が多忙な中、どうしてももうひとり欲しいという。投薬のせいで体重はいまや僕と変わらない。来年は44歳になる。

僕は相変わらずだ。かずふみのことが心配すぎてメンタルクリニックに通い、睡眠薬が手放せない。

いちに子育て。2に家事。3、4が妻のサポート。5が仕事。

でも悪くないよ。

子育てをしてから最大に言いたいこと。

保育士のみなさん、いつもありがとう!

偉い人たち、彼らの給料を上げてくれ!
「保育士の給料を倍にします!」を選挙公約とする候補者に僕は投票します。

そしていったいなぜか、どういうわけか。

ここまでの話とまったく関係なく。

3年前にふさこが僕宛てに送ってきた熱烈なメールが出てきた。

当時僕たちは、セフレ以上恋人未満の関係で、僕は三軒茶屋に、ふさこは京都に住んでいた。

以下、メール全文。

私、2002年に大学卒業して、実家に帰るときに、東京を離れるのが怖くて怖くて、引越ししたのが8月(卒業は3月)だったんですけど、今は行ったり来たりの生活。ナチュラルに。

で、昨日もくるりの岸田くんや佐藤くんが、行ったりきたりしてる、って話してましたよね?
ありきたりだけど、自由にすりゃいいと思うんですよね。

で、私は樋口さん、京都で一緒に暮らしましょうよ。
イヤになったらまた戻ればいいし。

樋口さんは、前半の人生からしたら後半出来過ぎ、っていうけど、それは評価の問題でね、樋口さんの潜在能力ならすれば、まだまだ均衡がとれてないかもしれませんよ。もっといいことあってもいいじゃん!って思う。

私は、何度も言うけど、ほんとに樋口さんの子どもが欲しいし、樋口さんが子煩悩になるのが見えますよ。

今日も姪っ子さんとの写真見て、さらに強くそう思ったし。

マッサージなら毎日するし、料理は毎日は多分無理だけど、喜んでくれるなら、するし。

糸井重里夫妻だって、東京と京都に家があるんですよ! そんな生活もありですよ、私、まだまだ稼ぎますよ。

お仕事第一。
私が、もし樋口さんのお仕事の邪魔になるなら本意じゃないです。 お仕事、してくださいね。

私の考えを—。

東京を捨てるとかじゃなく、一度京都に住んでみませんか? 一緒に。

高校生の頃までは、こんなとこに居たくない、居たくないと思い続けていたけれど、弁護士になる前にも、イヤだイヤだと思っていたけれど、素晴らしいとこです。住むには最高。こじんまりしてて。イヤだと思ってたのは、そのときの自分自身だっただけです。(離れてみたから分かったけど。)

東京捨てるような気になるのは分かるんですけど、そんなことじゃなく。

どんなに忙しくても、私だって毎日家には帰るし、マッサージは毎日してさしあげます(ただし、出張とかあるけど。)
料理は長らくしてないけど、努力します。嫌いじゃないし。

そして何より、毎日毎日、鬱陶しいくらいの愛情と、尊敬と、抱擁をあげたいです。

京都のいいところだけじゃなく、世界中のいろんな所に一緒に出かけたいです。
くるりの音博、一緒に行けて楽しかったです。(楽しくなかったらどうしよう、と思ってたけど。)

くるりの「グッドモーニング」は、目的地に着いたと思ったけど、実はまだ始まりにすぎなかったんだ、これまでの悩みなんてつまらないことばかりだったけれど(そのときは一大事でも)永遠にそれは続いていくし、その繰り返しに絶望も感じるけど、それでも歩いていくしかないし、なんとか(生きてる限り)歩いていけるもんだ、ってことだと思うんです。いや、知らんけど、私はそう思う。

一度、京都に住んでみませんか?ってゆうのは、私自身がずっと京都に住むつもりもないから、です。樋口さんとはずっと一緒にいたいです。永遠のお約束はできないけれど、それでも永遠を前提としたパートナーとして。

万が一、樋口さんが不治の病にかかったとしても、京都には京大も府立医大もあるし、最高の治療は受けられます。医者人脈もお任せ下さい。

樋口さんには、ずっと大好きな仕事をしていてほしいなぁと思います。
私みたいに消去法で導かれた仕事じゃないから。

だから、樋口さんの仕事にとって、私が邪魔になったら遠慮なく私を切り捨てて下さい。大丈夫、何度でも立ち上がれる強さが私にはある(はず。多分)

今私が住んでる家に一緒に住むか、どこかに引っ越すのか、具体的に考えてます。樋口さんが京都で仕事するとして、その場所(家の中の)の問題です。

とりあえず、樋口さん用のスウェットを買いました。
あと、鍋とかも新調した!

もうこんなこと二度とは言えないので、正直死ぬほど恥ずかしいです。

終わり。

こんなに債務不履行な内容があるだろうか。

ああ、思えば遠くに来たもんだ。

また来年。穏やかな年になりますように。


育児日記の続編は、樋口毅宏さんのnoteで準備中です!


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この連載について

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Baby Don't cry 〜赤ちゃんと俺とキレ妻と〜

樋口毅宏

伝説の育児日記が帰ってきた!『おっぱいがほしい!——男の子育て日記』で、各方面を騒然・唖然・呆然とさせた作家の樋口毅宏さんが、満を持してcakesで続編をスタート!東大卒弁護士という華やかな肩書きと裏腹に、常識が通用しないぶっ飛んだ奥...もっと読む

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コメント

hidari_s 赤の他人なのにちょっと感動してしまった。 25日前 replyretweetfavorite

moxcha この手紙好きだなぁ 25日前 replyretweetfavorite