彼に迫られる中、話してしまった本音

20代の頃は遊ぶ相手を選び放題だったのに、今は誰からも選んでもらえない事に気づいた麻衣子。そんな中でLINEを送ったのはどんな相手なのでしょうか? 著者の体験を元に「港区女子」のその後を描いた小説です。


スマホを持って15分経過。
文字を打っては消してを繰り返し、やっと作った2行。
いや、やっぱり質問形式で終わらせた方が返事が来やすいかもしれない。
もう一度消して、推敲。
もっと謙虚に伝えたほうがいいかな。
そしてここに句読点入れとこう。 ええい! やっと送った渾身の3行。

「お久しぶりです。かなりご無沙汰していますが、お元気ですか??よかったらまた一緒にご飯食べにでも行きたいです。」
はてなマークは2つ重ねるのがマスト。ちょっととぼけてて可愛らしい印象があるからだ。それから口語ではつい「ご飯でも食べに」と言いがちだが、文字に起こすととやぼったいので「ご飯食べにでも」としたところもポイントだ。細かいようだが意図や気持ちを誤解がないように伝えることはとても重要で、「ご飯でも食べに」とすると、まるでご飯以外のものを食べに行く選択肢があるかのような変な含みだが、「ご飯食べにでも」とするとご飯を食べに行く以外に飲みに行くことや映画を見に行くことなどの選択肢があるようなニュアンスを持たせることができる。星の数ほどお誘いのメッセージを送ってきたので、研究に研究を重ねた結果、相手を惹きつける一字一句にはこだわりがある。

約2年ぶりに送ったこの渾身の3行に、果たして返信なんて来るのだろうか。恐ろしくて居ても立ってもいられない。部屋の掃除でもするかな。いや、ついでだから模様替えでもしようか。ソファの位置をずらしてみようかな。そんなこんなで、返信きたかな。いやまだ送って1分しか経ってないし。でも気になるから既読になったかだけでも見てみようかな。
そわそわが止まらない。
とにかく気をそらせながら過ごし、気がつけば部屋の片付けに没頭し約2時間後、開いたLINEに返信は来ていた。
「おぉー、久しぶりだね。ご飯行こう! いつ頃空いてるの?」
今までなら婚活パーティに行っていたせっかくの日曜日。行かなくなったからといって婚活をサボらなくて本当によかった。やはり何もしなくては何にもならない。
こうしてスマホスクロール作戦は功を奏し、私は休眠の掘り起こしに成功した。
それが10月のこと。

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バラの命は短くて

一色トワ

麻衣子、30歳。20代の頃は商社マンやIT社長たちから口説かれ、合コンやパーティー三昧の日々を送っていたのに、30歳となった今、気が付けばもう誰からも飲みに誘われなくなっていた。キャリアがあるわけでも、なにかやりたいことがあるわけでも...もっと読む

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nekonosara28 港区女子の「その後」。一色トワさんの婚活連載小説、第5話がcakesで更新されました🌼 (イラストを描かせていただきました) 25日前 replyretweetfavorite