ノイズの収集を習慣にせよ
情報が大事だと、繰り返し説いてきた。その際、注意してほしい。自分の意見に近い、「完全な同意」の情報ばかりに、囲まれないことだ。
自分の感性に親和する意見ばかりを集めていれば、気持ちいいだろう。「世間には同じ意見の人がいる!」と確認して、安心感も得られる。だが、採り入れる情報全部を、ストレスフリーな意見で占めてしまうのは筋がよくない。
あなたが生きている世界は、果てしなく多様だ。
正しい意見の周りには、まったく異なった視点の、同じように正しい意見が無数に存在する。多様な全体を見ながら、拒絶したい情報にも触れ、自分の立ち位置を知るべきだ。そうすることで批評性や論理性が養われる。怪しげなスピリチュアル医療や、陰謀論に騙されない眼力も磨かれるだろう。
生理的に嫌な情報を無理して入れることはない。けれど考察が行き届き、学びを得られそうな知見は、情報収集の訓練としてフォローしておくことを勧めたい。
メンタルマネジメントの常識は「嫌なものは見ない」ことだが、耳触りのいい情報だけ読んでいたら、思考は成長しないのだ。
苦みを感じる情報を、修業のつもりで噛み砕いていこう。
僕はスマホを見るとき、賛同しない意見にも、すすんで触れるようにしている。仕事での対談相手も、少しぐらい意見が対立しても、新しい視野を得られそうな人を選んでいる。自分の視野を広げるためには必要な作業だ。
僕は、好きなことばかりやっているけれど、情報はその限りではない。嫌いな情報もあえて採り入れ、世の中の全体像を、常に把握しておきたいのだ。
Twitterでは、正反対の意見の人をフォローしている。山本太郎や鳩山由紀夫など著名人の呟きも読んでいる。ほぼ同意できない、腹の立つ意見ばかりだが、ごく稀に芯を突いた言葉が出てくる。ムカつくけど、なるほどなぁ……と、素直に思えたりする。そうして自分の無意識の、偏ったバイアスが修正されることもあるのだ。
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