ちらほら見かけるようになった、的はずれなネットレビュー
いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。
先日、あるパン屋さんへのネットレビューで、「バゲットが、外はバリバリで中がモッチリで気泡だらけ。食べて損した ★2」みたいな感じで酷評しているのを見かけました。もちろんわかっている方はいると思いますが、美味しいバゲットは、外の皮が固くて中がモッチリ、気泡も多ければ多いほど良いという人も多いです。
あるいは、ある天ぷら屋さんで天丼を食べた人のネットレビューで、「天ぷらがさくさくではなかった」というのも見ました。これもご存じの方は多いでしょうが、老舗の天ぷら屋さんの天丼は、出す前に蓋をして天ぷらをしっとり蒸らすんです。あえて蒸らしているので、天ぷらはさくさくしていません。
こういう「知らないがゆえのコメント」ってたまに見かけます。まあでも、これも一つの言論の自由なので、嘘や誹謗中傷にならなければ、お店の味をどう評論しようと止めることはできません。だからこそ、僕らもその文章に対して、「こいつわかってないなあ」って言い返すのも自由なはずです。
僕は、評論家ってすごく重要な存在だと思うんですね。例えばワイン評論家という肩書の人がいます。もちろん「ワインなんて好きに飲めば良いんだよ」っていう考え方もありですが、一方でワインのような嗜好品って、高級なワインやカジュアルなワイン、世界中のいろんな作り方のワインを飲めば飲むほど、「なぜこのワインが世間で美味しいと評価されるのか」とか、「なぜ、世界のワインの流行はこちらに向かっているのか」とかっていうことがわかってくるんです。
一般の人はそんなにたくさん飲むことができないからこそ、評論家がたくさん体験して、それを言語化して消費者に伝えることができるんです。歌人の穂村弘さんが、書評家の豊崎由美さんについて、「ある作家の作品を、もし悪く評価するときは、その作家の全作品を読んでからにする」と言っていたと書いていました。その姿勢、素晴らしいですよね。
一方で、ネットで「この店の料理不味い」とか「この作品つまらない」ってコメントしている人たちに対して、「素材も調理もこんなにこだわってるお店、ほとんどないと思うけどなあ」とか、「物語の展開も人物の描写も、この作家さんよりできる人いるかなあ」みたいなことを、どうしても感じてしまうことが多いです。
「薄い」コメントよりも「濃い」ことを書くためには
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