仲野太賀の緩急に翻弄される

今回取り上げるのは、俳優の仲野太賀。映画などを中心に演技を高く評価されてきた仲野を、武田砂鉄さんはどのように見たのでしょうか?

芸人がドラマに、俳優がコントに

お笑い芸人が演技に挑戦する、俳優がコントに挑戦するといった、いつもと違う仕事に挑んでいる光景というのは、正直、評価されやすい。テレビを見ながら、「意外にも馴染んでいるな!」「難なくこなしているな!」と極めて偉そうな評価を下すのだが、冷静に考えてみれば、それを生業としている人に対しては「馴染む」「こなす」なんて言い方はしないわけだから、自分で勝手に採点を甘めにしているのである。

又吉直樹と羽田圭介が同時に芥川賞を受賞した後、又吉よりも羽田のほうがバラエティ番組に頻出したのは、作家なのにその場に最適な所作を繰り返していたからだったわけだが、そうやって、なぜかあらかじめ備わっていた才気で自由気ままに境界を飛び越えていく光景って、採点を甘めにしていなくても面白いのに、採点を甘めにしてあることも相まって、さらなる面白さを作り上げていく。

合致とズレ

先月5日に放送されたコント番組『LIFE!』に出演していた仲野太賀がまさにそれだった。以前からこの番組が好きだった仲野自身が出演を懇願したそうだが、たとえば、共演していたゆりやんレトリィバァよりも、笑わせようとする前のめり度合いが高く、その懸命さはたちまちそれぞれのコントに馴染み、すっかり、番組を操縦しているのはこの人だという時間が続いた。そうやって操縦する感じが、あえて控えめにしている芸人・ゆりやんの演技を面白おかしくさせるという珍しい効果も生んでおり、その撹乱も含めて見入ってしまった。

仲野、そして菅田将暉、神木隆之介の3人が演じるお笑いトリオ「マクベス」の群像を描くドラマ『コントが始まる』を観ていると、自分の青春や20代を捏造したくなる。こういうことなんてなかったのに、こういうことがあったよな、ってことにしたくなるのだ。10年間お笑いを続けてきたものの、いまいち芽が出ないまま、それぞれの事情もあって解散を決意し、解散ライブを控えている、というのが現時点。3人の意見が合致した時の弾け方と、それぞれの意見がズレた時の繊細なほつれが交互にやってくる。諦めた、という経験って、記憶としてはタンスの奥にしまっておきたい部類に入るが、あれってなかなか消えないし、使いようによっては、前に進むエンジンにもなる。

仲野の振る舞いで打破する

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365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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yellowane4 |ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜|武田砂鉄|cakes(ケイクス) https://t.co/QoSRc2RE4Z …太賀くんがあちこちで論じられるようになりましたが、この一見淡々とした文章が、読んだ中では一番しっくりきました。 10日前 replyretweetfavorite

thinktink_jp "仲野、そして菅田将暉、神木隆之介の3人が演じるお笑いトリオ「マクベス」の群像を描くドラマ『コントが始まる』を観ていると、自分..." https://t.co/7xD45omkdi https://t.co/wYxzwc7ab4 #drip_app 11日前 replyretweetfavorite