調味料は少ない方が台所がすっきりしていいもの。最低限必要な調味料を挙げていくと「塩」「砂糖」「しょう油」「酒」「酢」「みりん」といったところでしょうか。しかし「みりんは家にない」という人も案外、多いのでは。
あるいは家にみりんがあっても「レシピに書いてあるのでなんとなく入れている」という人がほとんどではないでしょうか。ほとんどの料理本では調味料の役割や効果の説明はないので「なぜ使う必要があるのか」というのは意外とわからないもの。
今日はみりんについて解説していきます。みりんを1本台所に置いておくと和食の味付けは簡単になります。昔からお惣菜を作る時は「しょう油とみりんを同割に入れておけ」と言いますが、しょう油とみりんを1:1で加えるだけで味がまとまりますし、煮物や照り焼きにみりんを使うと照りが出ますし、風味も良くなります。
「みりん」にしかできない仕事
みりんは砂糖と同じく、甘い調味料です。
「だったら砂糖で代用できるのでは?」
と思うかもしれませんが、そういうわけにはいきません。みりんは焼酎(または醸造アルコール)にもち米と米こうじを加え糖化させた調味料です。砂糖の甘みはショ糖なのに対して、みりんの甘みはブドウ糖やオリゴ糖などに由来します。そもそもの成分が違うので砂糖で代用することはできないのです。
砂糖の甘さは単純ですが、みりんの甘さが複雑で、さっぱりしているのもこのため。この糖類の違いは料理の照りなどにも影響します。また、みりんには甘み以外にも米に由来するアミノ酸が含まれていて、料理にコクとうま味を加えられます。
砂糖のショ糖はカラメル化するだけですが、ブドウ糖とアミノ酸を一緒に加熱するとメイラード反応が起きます。メイラード反応はいわゆる「おいしさ」をつくる反応で、その過程で複雑な香味成分を生成します。そのため、照り焼きや焼鳥のたれには砂糖だけではなく、みりんを入れたほうがおいしいのです。 また、みりんは熟成過程でそもそもメイラード反応に由来する香りがあるので、それも料理の香りをよくしてくれます。
みりんにはアルコールが含まれているため、分類上は酒の仲間です。酒税法の範囲に入るので、やや高価になりがち。酒税法から逃れるために登場したのが安価な「みりん風調味料」と「みりんタイプ調味料」です。
みりん風調味料はブドウ糖やオリゴ糖などの糖類に米や米麹、うま味調味料、香料などをブレンドし、みりんのような味に仕上げたもの。アルコールを含まないので酒税がかからず安価ですし、子供にも安心して使えるという利点があります。しかし、酒の回で説明したようなアルコール特有の「煮崩れを防ぐ」「味の浸透を早める」「魚や肉の臭みを消す」などの調理効果は望めません。
みりんタイプ調味料は発酵調味料や食塩みりんとよばれるジャンルの製品で、本物のみりんと同様に作った後に塩を添加しています。塩を加えることで飲用できない=酒税法の分類から逃れることができるので、やや安価ですが、塩分があるので味付けには注意が必要です。
種類があってややこしいのですが、この2つと区別するために標準的なみりんは「本みりん」と呼ばれています。僕がオススメするのはこちらです。
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