歌垣(うたがき)の後、シビを討つ②
★前回のおはなし→「女をめぐって古代のラップバトル【第25代①】」
皇太子はこのとき初めて、シビが、すでにカゲヒメと通じていたことがわかりました。
皇太子は、マトリとシビ親子が、ことごとく礼を失しているのを知って、顔を赤くして怒りました。その夜すぐ、大伴連(おおとものむらじ)・カナムラ(金村)※1の家に行き、兵を集め計画を練りました。
カナムラは、数千の兵を率いて待ち伏せし、シビを乃楽山(ならやま)※2で殺しました。
このとき、カゲヒメは後を追いかけて行って、シビがとうとう殺されてしまったのを見て、驚き恐れて気も動転し、悲しみの涙が溢れました。そうして、歌を詠みました。
石上(いすのかみ) 布留(ふる)※3を過ぎて
薦枕(こもまくら) 高橋(たかはし)※4過ぎ
物多(ものさは)に 大宅(おほやけ)※5過ぎ
春日(はるひ)の 春日(かすが)を過ぎ
妻隠(つまごも)る 小佐保(をさほ)※6を過ぎ
玉笥(たまけ)には 飯(いひ)さへ盛(も)り
玉盌(たまもひ)に 水(みづ)さへ盛(も)り
泣き沾(そほ)ち行(ゆ)くも 影媛(かげひめ)あはれ
(※訳:
布留を過ぎて 高橋を過ぎ
大宅を過ぎ 春日を過ぎ
小佐保を過ぎ
美しい器には飯まで盛り
美しい椀には水さえ盛り
泣きぬれて行くよ
カゲヒメは ああ)