コロナ禍でバーから定食屋に。人気店の裏にあるもの【真鯛の塩焼き定食】下2食堂

地元民から愛される絶品メニューがある。キャベツがぱりっと新鮮。漬け物はできる限り自家製。安い。女ひとりもOK。5条件を満たす定食屋を『東京の台所』の著者・大平一枝(おおだいらかずえ)が訪ね歩く。儲けはあるのか? 激安チェーン店が席巻するなか、なぜ地価の高い都会で頑張るのか? 絶滅危惧寸前の過酷な飲食業態、定食屋店主の踏ん張る心の内と支える客の物語。人気の住宅地・三軒茶屋で挑戦する定食屋を訪れた。


市場勤務経験を活かし、鮭は豊洲の鮭専門店から特級品を仕入れている

コロナ禍どまんなかの昨年10月開店

 鮭がどーんと厚切りで、想像していた「鮭の塩焼き定食」よりずっと大きくて、ずっとおいしい。甘塩の加減がちょうどよく、定食は魚より肉と決めこんでいる向きもきっと鮭の実力を見直すだろう。

 隣客が頼んだ定食の縞ホッケも身がふかふかと厚く、皿いっぱいに鎮座している。


縞ホッケの干物定食。小鉢2皿(6種)がついて1000円


 小皿には、ほうれん草のおひたしと、だしが染みた煮玉子、ごぼうとレンコンのきんぴら、ひじき煮、自家製メンマ、かぼちゃの煮物。そうそう定食屋ってこういうちょっとしたおかずが何種類もあるのがうれしいんだよな。

 ご飯はつやつやで甘味が強く、炊きたてのほかほか。初めて行ったとき、家人はあまりの米の旨さに「別料金になっていいのでもう1杯ください」と珍しくおかわりをしていた。普段は「おかわり無料」でなければ頼まないスーパーケチ男なのに。

 とにかく下2(しもに)食堂の定食は主菜、副菜、米からただものではない感がにじみ出ている。おっと、忘れるところだった。味噌汁は魚のアラでだしをとっている。その日の魚によって風味が変わる唯一無二の椀だ。


1階は自然派ワインの名店ウグイス(現在休業中)。下2食堂は2階

 世田谷区下馬2丁目だから、下2食堂。三軒茶屋駅からけっこう歩く。商店街から外れた住宅地の一角、それも古い小さなビルの2階で、わかりづらい立地ながら、客はひっきりなしに訪れ、ある日曜のランチでは、私が数える限り4組が満席で入れなかった。

 知る人ぞ知る人気食堂の歴史は、たった半年。コロナ禍どまんなかの去年10月に開店した。その前は同地でバーを10年やっていた。

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台所の数だけ、人生がある。お勝手から見えてきた、50人の食と日常をめぐる物語。

東京の台所

大平 一枝
平凡社
2015-03-20

この連載について

初回を読む
そこに定食屋があるかぎり。

大平一枝

絶滅危惧種ともいわれながら、今もなおも人々の心と胃袋をつかみ、満たしてくれる「定食屋」。安価でボリュームがあり、おいしく栄養があって…。そこに定食屋があるかぎり、人は店を目指し、ご飯をほおばる。家庭の味とは一線を画したクオリティーに、...もっと読む

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コメント

pipe567 なんか雰囲気が、、、と、思ったら、オドモ定食屋さんになったんだぁ。おいしそ。 |大平一枝 @kazueoodaira |そこに定食屋があるかぎり。 https://t.co/OBy1BTzujg 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

pinkishrabbit77 連日満席。元バーの定食屋、攻めの大転換【真鯛の塩焼き定食】下2食堂 #SmartNews https://t.co/YXWYXqvDFA 約1ヶ月前 replyretweetfavorite