※この記事の情報は、『週刊東洋経済』2017年7月10日発売当時のものです。
チャレンジする若者がいなくなる
NPO法人ほっとプラス代表理事・藤田孝典
若者が置かれている状況は本当にひどいと思う。1990年代から雇用が劣化したような状態になって、賃金が上がらない。終身雇用はすっかり破壊されてしまった。たとえば、今の60歳代の人たちが享受してきた社会システムの恩恵からはまったく除外されていて、その部分を何で穴埋めするかといったら、家族、あるいは借金しかない。働いていても、実家から仕送りをもらう。その仕送りは父親や母親の年金から出ている。
非正規の社員だったり、ブラック企業に勤めていたり。3~5年の期間で転職を繰り返す。当然、求職活動をしている間も生活費はかかるわけで、自分の努力ではどうにもならない。奨学金、借金、家族間の貸し借り……。さまざまなおカネのやり取りがぐちゃぐちゃになって、手に負えなくなったときに私のところに相談に来る。
20歳代後半、それこそ大学を卒業したばかりなのに500万円も600万円も借金を抱えている。母子家庭で育った若者が母親を援助することもある。出身家庭が貧しい若者は大学の学費だけでなく、実家への仕送りも必要になる。アルバイトだけで稼ぐのは無理な話で、手軽なカードローンなどに頼ることになる。
企業にはもっと努力してもらいたい。福利厚生費を引き上げることはできないのだろうか。若者が困っているのは生活費である。初任給は月20万円前後なのに、都心でワンルームマンションを借りると月10万円以上かかる。昔だったら、1万円や2万円の家賃で社宅に住めたはずなのだが。
時代と懸け離れる50歳代以上の楽観主義
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