※この記事の情報は、『週刊東洋経済』2017年7月10日発売当時のものです。
奨学金はブラック労働を助長する
NPO法人POSSE 代表・今野晴貴
奨学金が、若者をボロボロになるまで使うブラック企業問題とつながっていると気づいたのは、だいぶ前だったと思う。それからずっと奨学金問題に取り組んできたが、最近ようやく本にまとめることができた。
我々はこれまで200人を超える若者から奨学金返済の相談に乗ってきた。1人当たり利用額が平均300万円に上る奨学金は、普通の人にとって住宅ローンに次ぐ大きな「借金」だ。大学生の約2人に1人は、この莫大な返済義務を背負って社会に出ている。
労働市場の現状は、この借金にとても耐えられない。なにせ雇用の3割以上は非正規職。正規雇用についても外食、サービス産業などでブラック企業が多い。全雇用の半分ぐらいが非正規とブラックで占められると言っても過言ではない。こんな労働市場では返済に困る人が増えて当然だ。
運よく普通の会社の正規職に就けても、病気とか親の介護などで、会社を辞めざるをえなくなるケースもある。実際、それで当NPOに相談に来る人もいる。
親から「返している」と聞いていたのに返していなかった、と知って相談に来るケースも多い。利子や延滞金の累計が100万円ぐらいになった状態で相談に来ると、もう自力では返せない。
日本学生支援機構は、バリバリの金融事業者だと思う。親世代の多くは、この実態をよくわかっておらず、あまりにも気軽に借りさせてしまっている。