「オレは幸せ者だな、神に感謝!」と言った
それこそ安倍晋三前首相が顕著だが、皆、なぜか、辞めた政治家に甘い。彼に厳しい言葉をぶつけ続けてきた人でも、もう辞めたんだし、と放置する。複数の疑惑を封じるように辞めた人に向けて、その封をもう一度開けて問い直す姿勢が乏しいのは、辞めた人からすれば「マジでラッキー」「超助かった」ってなもんだろう。先々週末で、森田健作千葉県知事が退任した。東京都に住んでいると、どうしても小池百合子都知事の諸政策へのツッコミを優先してしまい、隣県の森田健作の振る舞いに関心を持てずにいた。
退任式で、森田健作が自身の歌「さらば涙と言おう」の一節「青春の勲章はくじけない心だ」を歌い上げ、「『おれは男だ!』の小林弘二は、まさに、『青春の勲章はくじけない心だ!』と、私はそう思って芸能界においても政治の世界においても、自分に叱咤激励して、今日のこの日まできましたよ。青春の勲章はくじけない心だと、これからも思い続けて参りたいと思っております」と述べた。それにとどまらず、「オレは幸せ者だな、神に感謝!」と両手を大きく広げたのだという。2019年の台風15号の初動対応など、自身の活動に反省もあるとしながらも、とにかく、自分に宿っている「青春」は健在で、神に感謝している現状だというのだ。東京にいる人間が作るメディアは、これほど珍奇なエンディングをさほど報じなかった。
俺のような青春がみんなにもあった前提
時代は変わる。だから今、「おれは男だ!」と言われたら、「うるせぇ、だからなんだ」と答えればいいのだが、過去作品の世界観まで一概に否定されるべきではない。とはいえ、彼は、現在の信条として過去の作品を持ち出している。ならば、改めて検証されるべきだろう。彼は、『おれは男だ!』で演じた小林弘二をどのように位置付けてきたか。「当時社会的風潮として勢いを増していたウーマンリブと対決し、旧き男として〝わが道を行く〟高校生」(森田健作『ゼロの勇気 いま再び「青春の勲章」を』2008年)とある。ウーマンリブと対決する男の姿を、今の自分と重ね合わせていたのである。