cakes読者のみなさま、こんにちは。
暖かくなって来ましたね。どこかへ出掛けたくなるなあ。そんな気持ちをなだめつつ、かつての旅を反芻して……と書きながら、いや、まてよ。考えてみると、そもそも旅は反芻してこそ。コロナ禍以前から、旅は反芻することにこそ価値がある。あのとき、あそこで食べたあの味を思い出しながら普段の食事でそれを再現することは、旅の続きみたいなもの。だからマスク生活であろうがなかろうが、旅を思い出すこと自体が旅の続きなのだ。
なーんて、ちょっと強がってみました。でも、旅ってそういうものだと思うんです。だから今回は、旅の続きをご一緒に。ポルトガルの学問都市コインブラに住む、料理好きなマリア&マヌエル夫婦のもとでホームステイさせてもらったある晩のこと。その日マヌエルは用事で出掛け、夜はマリアと2人だけで食べることに。マリアは冷蔵庫を覗き込むと、「今日は簡単な料理にするわね」と言って、じゃがいもと卵を取り出しました。小さく切ったじゃがいもを多めの油で揚げ炒めして、仕上げに白ワインビネガーをむせ返るほどふりかけて完成。キッチンにはもうもうと酸っぱい香りが立ち込め、目がしょぼしょぼして、びっくりしたなあ。
そして銘々の取り皿にはカリッと焼いた目玉焼きを準備し、その黄身を、じゃがいもにソースのように絡めていただきました。ワインビネガーはぶどうの発酵調味料だからうま味がたっぷり詰まっていて、これだけでじゃがいもが食べ飽きないおかずになり、ワインのつまみになるというわけ。ワインの国ならではの家庭の素朴なお惣菜に、興奮したことを思い出します。で、この料理の名前はなに?と何度もマリアに聞いたのですが、「じゃがいも炒めとしか言いようがない、名前なんてないから」と。じゃがいもがたくさんとれる、マリアの故郷の料理。名もなき家庭料理だけど、私の中では最もポルトガルらしい味のひとつです。
当時、これを食べながら豚肉もきっと合うと思ったので、レシピには豚肉を加えています。あと、ローズマリーも私の好み。でも、なくても平気。マリアのように、じゃがいもと卵だけで作るのもシンプルでいい。じゃがいもは、今ならみずみずしい新じゃがが、火のとおりも早くておすすめです。
では、パパッと作っていきましょう。
Menu do dia 本日のメニュー
「マリアのじゃがいもサワーソテー」
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。