短縮すべきは、願いのサイズではない。時間だ。
僕は中学生のとき、プログラミングに熱中していた。専門誌に投稿して掲載料をもらったり、プログラミングスキルが上がってくると、さらに性能のいいパソコンが欲しくなった。新しく買いたかった機種は、数十万円もした。お小遣いではまるで手が届かなかった。そこに廉価版の機種が発売された。ダメもとで親に相談してみると、意外にも「買ってもいいだろう」という返事だった。ただし「代金を貸す。そのお金は、新聞配達のアルバイトで返しなさい」ということだった。
親に金を貸してやると言われてから、僕は毎日コツコツ新聞配達を続けた。毎朝早朝5時に起きて、自転車で100軒以上の家に新聞を配るのは大変だった。でも新しいパソコンのために頑張った。そして念願の機種のパソコンを買ってもらい、親には数ヶ月で借金を返済することができた。
この経験で僕は、前向きな借金は、すすんでしてもいいという考えを培った。時間をショートカットして、欲しいものが得られるなら、借金は全然OKだ。
お金を返せなかったらどうしよう……という迷いは捨てていい。やりたいことを先延ばしにする時間の浪費の方が、もったいない。それは僕の揺るがない信条となった。
初めて会社を起こしたときも、資金は借金からのスタートだった。600万円を人から借りた。当時は23歳の東大生。実績ゼロの若者が背負う金額としては大金だった。
普通の若者なら躊躇すると思う。自己資金を貯めてから起業しなさい、とアドバイスされるかもしれない。でも僕は、少しも怖じ気づかなかった。
借金の心配より、インターネットビジネスの無限大の可能性にワクワクしていた。
起業してほどなく、IT革命の巨大なムーブメントに乗り、僕は若手起業家としてビジネスの世界を駆け上っていった。数年で、600万円の借金の10倍以上ものお金を動かせるようになった。借りたお金は、1年ほどで完済できた。
一度も、借金を後悔したことはない。借金したお陰で、僕は普通に大学に通っていたら見られなかった景色や、素晴らしい体験を得られた。
借金は、決してネガティブなものではない。本気でやりたいことに対して、大胆に挑む勇気を発揮できた者に許される勲章だ。
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