30歳、誰からも誘われなくなった「港区女子」の向こう側

麻衣子、30歳。20代の頃は商社マンやIT社長たちから口説かれ、合コンやパーティー三昧の日々を送っていたのに、30歳となった今、気が付けばもう誰からも飲みに誘われなくなっていました。キャリアがあるわけでも、なにかやりたいことがあるわけでもない。この状況でどこに向かえばいいの? 私は結婚がしたいのに! 話題になった「港区女子」のその後を描いたリアルな物語です。

毎晩、ベッドに入り月を眺めると、自然と涙が込み上げる。

今日一日頑張った身体を、布団が包み、癒やしてくれる。私を守ってくれるこの布団が、父と母が働いたお金で買ってくれたものだと考えると、この暖かさは両親に包まれているように感じるのだ。
そしてふと、なんで私はひとりなんだろう、と思う。
パートナーがほしい。信頼のできるパートナーがたったひとり、ほしいだけなのに。
なんでパートナーがいないんだろう。
愛情と孤独の間に私はいる。
両親から受けてきた愛情がとても愛おしくて、そしてパートナーがいない、いつまで続くか分からない孤独さに挟まれて、自然と出る涙だ。
お父さん、お母さん、ありがとう。
私もいつか、あなたたちのようになりたい。

あんなに大好きだった飲み会を、いつしか全くしなくなった。
週に1回が月に1回になり、それが自然と2ヵ月に1回と、どんどん少なくなっていき、気がつけばもう誰からも飲み会に誘われなくなった。男友達からも、女友達からも。
自分も企画しなければ、友達からも誘われない。気がつけば腰が重たくなっていて、6人分のスケジュール調整なんてアホらしいし面倒くさいと思うようになった。
女子会が苦手な私は、仕事帰りや休みの日に、もっぱらひとりで過ごすことが多くなり、自然と出会いも少なくなる。
所属していたランニングサークルも、しんどくなってもう行っていない。そもそもランニングなんて長距離走は苦手だし、誘われたからちょっと参加してみようかな、みたいなノリだった。結局何度か参加してみた結果、大晦日の渋谷を走りながらカウントダウンする「ミッドナイト・ラン」で出会った電通の男以外、たいした出会いはなかった。買い揃えたランニングウェアたちは、今はもうクローゼットの中で眠っている。

さて、30歳の誕生日を迎えた私は、この状況でどこへ向かえばいいのか。
あいにく私は、キャリアウーマンのようにはなりたくない。それより結婚がしたいのだ。

「あなたにハマったらもうあなたと生きていきたいと思ってしまうかもしれない」と囁いてきた妻子持ちのアミューズメント会社社長は、もう今や誘っても来やしないし、こちらから誘っても「息子の受験で大変だ」という話を聞かされるばかり。毎年祝ってくれていたホテルやクルーズでのサプライズバースデーはなんだったんだ。
友達の紹介で知り合った建築会社の御曹司とは付かず離れずを続けていて、久々に連絡が来たので会ってみると、「オレ結婚したんだけど、今奥さんが旅行中で久しぶりにひとりで遊べるんだよね」と言われた。ちょっと期待してしまった私の心を返してくれ。
合コンを共にしてきた同年代で仲の良い男友達はみんな若い子が好きで、今さら「またみんなで飲み行こう」など、恥ずかしくて言えない、言えるはずがない。
そういえば、よく飲みに行ったIT会社社長は私が25歳の頃、「27歳~29歳が女性が一番美しい時期らしいですよ」と言ったら、「いや~、僕の界隈ではあなたでギリアウトなくらいだよ」と言っていた。10代の若い女性を早めに狙って狩るのが良いらしい。しかし時はもう戻せない。

「友人の結婚式はお見合いの場だ」なんていつの話だろうか。
新郎の友達と仲良くなって結ばれるなんて、今はもう神話レベルに近い。
友達の結婚式に呼ばれても、全然喜ばしくない(本当に失礼な話だが)。
もっぱら、モチベーションは2つ。ドレスを着ることと、酒。「新郎新婦の入場です」って、その前に酒ふるまえよ、なんて美しいドレスを身にまとい微笑みながら心の中でツッコんでみたり。

人生が点と点を結んでいく作業のように思えた。家という点と職場という点。これを何度も往復して繋ぐだけの作業。
朝起きて母が作ってくれた朝食を食べ、いつも通りの電車に乗って出勤し、時間になればまた同じ道を辿るように家へと帰り、母が作ってくれた夕飯を食べ、父の後にお風呂に入り、両親が買ってくれた布団に包まれて眠る。いつまで続くかわからない、もしかしたらこの先一生続くかもしれないとさえ思わせるこの作業は、不自由がないからこそ心地よくもあるが、これを続けることは怠慢以外の何者でもないと、日々私の危機感は募っていった。一日、一日、着実に歳をとり、シワが増えオバサン化していくのに、この状況は変わらないという焦燥感。完全に手詰まりだ。

でもとにかく何か行動しなくては何も始まらない。また今夜も暖かい布団の中で枕を濡らすことになる。今さら婚活目的の合コンなんて恥ずかしくてもうできないから、婚活パーティにでも行ってみよう。

30歳の誕生日をむかえた3ヶ月後、私はインターネットで調べ上げいろいろな会社が主催している婚活パーティに手当たり次第参加していた。

(イラスト:猫野サラ

この連載について

バラの命は短くて

一色トワ

麻衣子、30歳。20代の頃は商社マンやIT社長たちから口説かれ、合コンやパーティー三昧の日々を送っていたのに、30歳となった今、気が付けばもう誰からも飲みに誘われなくなっていた。キャリアがあるわけでも、なにかやりたいことがあるわけでも...もっと読む

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コメント

tachi_ricker 中身がなく成長するって悲惨だなって感じしかしない 10日前 replyretweetfavorite

butakunbubu 胸糞悪い話読んでしまった。時間返せ。 「友達の結婚式に呼ばれても、全然喜ばしくない」のところで読むのやめた。それ友達ちゃうし、行くなや。 https://t.co/Ftuyf8TG2P 14日前 replyretweetfavorite

super_arai まんこ二毛作の香りを感じるのだ! 14日前 replyretweetfavorite

_a7r9 何故か引き込まれて結局全部読んだ。 15日前 replyretweetfavorite