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(カラン、コロン〜♪ カラン、コロン〜♪)
りんだ 「小鳥遊さん、こんばんは」
小鳥遊 「おや、りんださん。すみません、もう営業時間は終わりなんですよ」
りんだ 「ええ、いいんです。ちょっとしくじり話を聞いていただきたくて来ました。また来たときのためにツケておいてください」
小鳥遊 「普通のツケ客の逆パターンですね。いいですよ。またいらした際に何か料理をお出ししますね。洗い物や食器の片付けなどをしながら話を伺ってもよろしいでしょうか?」
りんだ 「はい、いいですよ」
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りんだ 「今日、面倒くさい仕事がきたんです。当社のある試作品についての感想をまとめて欲しいというものでした」
小鳥遊 「ほほぅ...感想の量はどれくらいあるんですか?」
りんだ 「それが、1000枚ほど...」
小鳥遊 「せ、1000枚!? それは大変ですね」
りんだ 「はい、もう始める前から嫌になってしまいました。作業自体は単純なんですよ。感想の紙を1枚ずつ見て、5段階評価で各評価がどれくらいあるかを集計するだけなんです。でも、とにかく面倒くさくて...」
小鳥遊 「そうですよね」
りんだ 「だから、『今日はやらない!』って自分で決めて他の仕事をしていたんです。そうしたら、上司から『試作品の感想のまとめ、今日一日でどれくら進みそう?』って聞かれて、とっさに『いえ、まだやっていません』って答えたんです」
小鳥遊 「他の仕事もありますしね」
りんだ 「そうなんです。でも上司からは、『なんでやっていないの?』って、ちょっと困ったような顔をされてしまって」
小鳥遊 「地味に辛い状況ですね。『上司を困らせてしまった』という罪悪感が湧いてきたりしますよね」
りんだ 「ええ、そうなんです。しまった~と思いました」
小鳥遊 「りんださんらしい、気遣いがあるからこそのしくじり体験ですね」
りんだ 「ううっ、ありがとうございます」
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小鳥遊 「ところでりんださん、ちょっと洗い物を手伝ってくれませんか?」
りんだ 「えっ!? 私が? いいですけど...」
小鳥遊 「ありがとうございます! こんなにたくさんの食器を洗ったり片付けたりするの、面倒くさいんですよね~」
りんだ 「(いったいこの人は何を考えているんだろう...。でも、たしかにこの量の食器は面倒くさい...)」
りんだと共に食器を洗いながら、小鳥遊はりんだに話しかける
小鳥遊 「りんださん、ちなみにその1000枚の感想はいつまでに終えなければいけないんですか?」
りんだ 「えーと、適当に見積もって『3週間くらいもらってもいいですか?』と言ってOKをもらったので...」
小鳥遊 「そうですか。3週間ですか...。となると、営業日ベースで15日ですね。一日当たりに換算すると、えーと、りんださん、計算得意ですか?」
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