同じマッチングサイトに20年居続ける男

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性や恋愛について考えるこの連載。コロナ禍で人との出会いが減り、マッチングアプリに登録してみた方も多いのではないでしょうか? 今回は、マッチングアプリを利用している森さんの知人女性から聞いた、とある男性のお話です。

桜の開花が近づいてきたというのに、相変わらず私は引きこもりである。春は出会いと別れの季節、そうだ、無理に外に出なくてもマッチングアプリというツールがあるではないか。さっそく誰かに聞いてみよう。

会わない前提でさみしさを解消するのもあり

「マッチングアプリは、一昔前よりもかなりカジュアルになってるよ」 と、私にLINEしてきたのは同世代の女性N子。以前、某カルチャースクールで一緒になった。随分会ってないし、LINEも久しぶりだった。

N子が登録していたのは写真や身分証明書を必要としないマッチングアプリで、プロフィール画像はアバターでOK。素100%をさらさず、いいところだけアピールすることもできれば、偽りの自分を演出することもできる。リアルでありながら適度に夢も見られるといったところか。ちなみに年齢層は高めのアプリだそうだ。

N子が登録したきっかけは、やはりコロナ禍で人との出会いが激減したからである。独身、ひとり暮らし、仕事は自由業で在宅勤務とくれば、人さみしくなるのも当然だろう。いや、たとえ既婚者だろうと子供がいようと、漠然とした不安感は拭えない。ネットだけの世界でもつながりがほしいと思って何らおかしくはないのだ。

N子自身はほぼ素のプロフィールを登録したと言うが、私はネットの世界で嘘をつく人を否定しない。嘘というか、願望に近いと思うからだ。私が登録したとしてもほぼ素のプロフィールにするだろうけど、アバターは真逆のルックスにしてみたい。人は誰もが一度や二度、別の人生や別の自分を妄想する。それをマッチングアプリでやって、他人を傷つけずに自分の世界に浸るだけなら、さほど罪にはならないのではないか。

とN子に吐露したら、

「私もそう思っていたのよ。自分を偽るといってもほぼ願望だから。会って嘘をつくのとはまた別でしょう。会わない前提でのやりとりだって成立するんだし」

会う前提ではなく、会わない前提でお互い即席にさみしさを解消する。それだって十分マッチングアプリの目的を果たしている。妄想×妄想だって、本人同士が楽しいなら別にいい。

仲良くなった相手はモラハラ男だった

ところが、「プロフィールを偽るような人とはやりとりしたくない」という男性(以下A男)がN子の前に現れたのだ。N子が自由業の職業と知って、やはり同じ自由業のA男のほうからメールしてきたという。A男はマスコミ業界の人らしく(本人談)話題も豊富で、サブカル好きのN子とすぐに長文メールをする間柄になった。やがて、会わない? 会ってもよくない? という空気になったそうだが、

「でも、だんだんその人が私にモラハラしてくるようになっちゃって」

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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。51歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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