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「癌になったぼくが結婚していいのでしょうか」
こんにちわ、幡野さん。
わたしは26歳会社員です。
昨年1月に希少がんの宣告を受けました。
予後不良と言われており、再発・転移の可能性も十分にあります。
病気の内容を知っててもお付き合いしてくれている彼女がいます。
彼女は治るという奇跡を信じてくれています。好きだから付き合い続けるし、結婚したいといってくれています。
でも、ぼくに彼女を守れる自信と勇気が持てません。
本心としては物凄く結婚したいです。幸せにしてあげたいです。
「後悔のないような人生」を送るためには、もちろん結婚したいです。
でも「後悔を残さないために」結婚しないことも選択肢だと思ってます。
毎日考えすぎて、おかしくなりそうです。 物事に正解はないとおもってます。しかし幡野さんのご意見、お聞かせ頂きたいで す。
(26歳がんサバイバー 26歳 男性)
世代差や地域差があるとおもうんですけど、30代後半で東京に住んでいるぼくの感覚からすると、26歳の男性が結婚をするのってわりと早い印象があります。同級生で結婚している人っています? まだ少数なんじゃないですか。
だから結婚するなよ、ってことをいいたいわけじゃなくて、むしろすぐに結婚をすればいいんじゃないですか。ただ、結婚にちょっと誤解があるのかなぁという印象を持ちました。「ぼくに彼女を守れる自信と勇気が持てません」ってありますけど、具体的に、いったいなにから彼女を守るんですか?
散歩に出かけたらツキノワグマにばったり出会うような地域に住んでるわけでもないでしょう。もし仮にツキノワグマに遭遇したら、自分の身を守るので精一杯ですよ。
彼女は大人ですよね。たぶん、ぼくやあなたと違って健康なわけでしょ。治安が悪かったり野生動物からの脅威があったりするのでもないかぎり、人が人を守るなんて状況はほとんど発生しないですよ。
これは元猟師としての意見なんですが、ツキノワグマに死んだフリなんて危険なだけですからね。クマは死肉も食べるから、死んだフリってエサのフリですよ。ぼくはもしもツキノワグマと遭遇したら、自分の体を大きく見せて大声で怒鳴りちらすと決めてます。たぶんひるむよ。
白馬の騎士じゃないんだから、日常的にはせいぜい重いものを持ってあげるとか、一緒に出かけるときに車の運転をしてあげるとか、トラブルが起きたときに対応をしてあげるとか、そんなもんですよね。
それはもう日常的なデートでもやってるでしょ。結婚しただけなら、夫婦の関係性って恋人とほとんど変わらないってぼくはおもいますよ。もちろん彼女が妊娠をしたり子どもが産まれたりすると、すこし話は別になります。妊婦や幼児は健康な成人と行動が違うしリスクも違うからです。
ぼくも結婚していますけど、妻のことを何かから守ってるかな。車のトラブルが起きないようにエンジンオイルを交換したり、スタッドレスタイヤに交換をしたり、花粉症の薬を買ったり、麦茶を作っておいたり、掃除をしたり料理をしたりとか、そんなもんでしょうか。せいぜい日常の手間やストレスから守るぐらいじゃないですか。
もし彼女をツキノワグマから守りたいというなら、クマ撃退スプレーをおすすめしますけど、もし彼女を不幸から守りたいというのであれば、なおさらすぐにでも結婚することをおすすめします。
彼女が望んでいるのはあなたとの結婚です。それが彼女にとっての幸せなんです。結婚をするだけで、あなたは彼女を幸せにすることができるんです。それに、「後悔のないような人生」をおくるために、あなただって結婚したいんでしょ。ツキノワグマから彼女を守るよりも、彼女と結婚するほうが圧倒的に簡単だとおもうでしょ。
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