出産の中で一番のトラウマ体験
これまで、感動する余裕もなかった壮絶な出産体験から、会陰切開(股を切る)の影響による痛みや腫れ、出血、おもらしなどの異常事態の連続の末に、病院のトイレで泣き崩れてSOSを発したエピソードまでを紹介しました。
これだけでも十分なトラウマなのに、本当に一番辛かったのは、出産直後の授乳と、溜まった疲労でパニック発作を起こしたことです。
私の出産は、母子ともに無事であったとはいえ、いま振り返っても辛さとトラウマばかりが思い出されます。今回で辛かった出産体験レポートはひと段落するので、もうしばらくお付き合いくださいませ。
休みなく始まる「授乳」という試練
子どもをお腹から産み出す分娩で、精魂をすべて搾り取られ、人生史上最高を記録する疲労状態に陥った私。それなのに、私の側をひと時も離れられぬ、この世に出てきたばかりの小さな生き物がころん、と存在しています。
このか弱い生き物は、じっと見守り、こまめに乳を与えなければ、ひとりで生きていくことはできません。自分がサバイブするのも危うい状態なのに、自分以上に守らなければいけない存在がいるなんて……。
そんなことを考え、悩む暇もなく、数時間おきの授乳作業が私を待っていました。
ところが、乳を欲しがって泣いていたはずの赤ちゃんを抱きかかえ、いざ乳首をくわえさせたところで、 乳を吸うことに慣れていないばかりか、吸う力も弱いのが新生児です。すぐに、疲れて眠りこけてしまい、まともにお乳を飲み続けてくれません。
これはよくあることらしく、看護師や助産師からは「赤ちゃんが寝ても、足をくすぐったりして刺激を与えて、無理矢理起こして飲ませるのよ~」と言われ、なんとかトライ。しかし効果はいっこうに見られません。
なかなか回復しない自分の体力と、さらに疲れの泥沼に引きずり込まれるような状況にヘロヘロになりながら、私は「頼む、頼むから、目を覚まして乳を飲んでおくれ~」と、昼夜関係なく、ただ、ただ、ひとりでこの作業を繰り返しました。
しかも、授乳を始めてからというもの、私の乳房はいつのまにか恐ろしいほどガチガチに固く、燃える鉄鋼のような熱と鈍痛を持つようになっていました。あまりの痛さにおっぱい専用の保冷パッドで冷やし、ごまかしながら授乳していたほどです。
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