さとり世代とは何か?
今、「さとり世代」という言葉が、多くのメディアで取り上げられています。そもそもこの言葉が生まれたのは、2010年1月。ネット掲示板2ちゃんねるの中の、元日経新聞記者である故・山岡拓氏の著作『欲しがらない若者たち』を語るスレッド上でした。今の若者は、車に乗らない、ブランド服も欲しくない、スポーツをしない、酒を飲まない、旅行もしない、恋愛には淡泊だ、と指摘するこの本に対し、ある一人(恐らくゆとり世代の若者自身)が、「さとり世代」と書き込むと、「いい言葉!」「面白いフレーズ」といったリアクションでスレッドが埋め尽くされ、この言葉が拡散していきました。
それから3年後、2013年3月18日の朝日新聞で「さとり世代、浸透中 車乗らない、恋愛は淡泊……若者気質、ネットが造語」という記事が出ると、大きな反響を呼びました。それを受け、朝日新聞がこの「さとり世代」についての連載を始めると、「さとり世代」という言葉が、更に多くのメディアで取り上げられるようになっていきました。
「大人たちは、僕たちが消費をしないとか、元気がないとか言って批判するけど、大した給料もない若いうちに、高いワインを飲んでいたバブル期の若者の方がおかしい。僕らは暗い時代に生きてきたから、さとってしまっただけなんだ!」という、それまで「ゆとり」という言葉によって、上の世代から見下げ続けられた世代の反抗として、「さとり」という言葉が生み出されたわけです。ちなみに、ゆとり世代の多くは、「ゆとり」と言われることが嫌なようです。
3月18日の朝日新聞の記事で私がインタビューを受け、「さとり世代」について語ったこともあり、私のところにも多くのメディアから取材依頼が殺到しています。ツイッターではこの「さとり世代」をタイトルにした「ニーチェ先生〜コンビニに、さとり世代の新人が舞い降りた」という一連のツイートが人気を集め、『月刊コミックジーン』(メディアファクトリー)で漫画連載されるようになりました。また、『HOMESICK』(監督:廣原暁)という映画が公開され、「さとり世代のリアル」を描いたと評判になっています。
本来、さとるはずのない、経験値のまだ少ない若者たちに、「さとり」というキーワードがつけられていることに、違和感や憤りを感じている大人もいるかもしれませんし、何やらクールな言動をするゆとり世代の若者たちとに接し、この言葉が肌感覚としてしっくりきた大人もいるのかもしれません。賛否両論、大きな反響をもって、この言葉は大人にも広がっています。
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