「揚げ物は面倒なので家ではやらない」という声もありますが、料理上手な人ほど普段の料理に取り入れています。揚げ物は調理する時間が短くて済むので、じつは効率的。
今回は揚げ物に欠かせない「揚げ油」について考えていきましょう。僕が選んだ揚げ油は「ひまわり油」です。
あちらを立てればこちらが立たない油選び
揚げ物については「油が軽いor重い」「揚げ上がりが軽いor重い」という表現がよく用いられますが、油の比重は種類によって変わりません。揚げ油の種類によって変わるのは主に食感です。
例えばスナック菓子や業務用惣菜の製造にはパーム油が用いられます。パーム油は動物性の脂であるラードやバターと同様に、常温で固まる性質があります。食材が吸い込んだ脂が固まるので、揚げ上がりこそ重くなりますが、冷めてもベタベタしないので、カリカリ感が持続します。逆に天ぷらの場合は冷めてもおいしい、というよりも、揚げてたの軽さが求められます。だから、天ぷらにはラードではなく、必ず植物性の油が使われるのです。
揚げ上がりに影響するのは植物油の精製度の違いです。精製度の高いサラダ油=一般的なキャノーラ油や大豆油で揚げると軽くなりますが、コクや風味がやや弱く感じられるかもしれません。そこで関東の天ぷら屋さんでは精製度の低いごま油を混ぜて、味を補うのです。関西ではごま油を使わず綿実油100%で揚げている店も多いので、このあたりは嗜好も出てきます。
また、食感の差には油の劣化(=酸化)で生じる粘りも関係しています。実際に何度も使用し、古くなった油で食材を揚げると、目的である水と油の交換が進まず、カリッと揚がりません。一方で、酸化することで生じる香りこそが揚げ物のおいしさの正体でもあります。あちらを立てればこちらが立たず。このように油には軽さやカリッと感を求めると、コクや風味が弱くなるという二律背反の側面があるのです。
油は原料となる素材によって、含まれる脂肪酸の組成が変わってきます。
オレイン酸
リノール酸
αリノレン酸
その他
オレイン酸は酸化しにくく、反対にリノール酸はやや酸化しやすい性質があります。例えばオリーブオイルは70%以上がオレイン酸です。酸化安定性を求めるならオリーブオイルも選択肢に入ってきますが、揚げ油にオリーブオイルが適しているのか、というとそうは言い切れません。純粋な油には味がないのですが、食用油には原料素材に由来する風味が残っています。それが料理の味になるのでオリーブオイルで揚げ物をするとどこか外国料理風の味になってしまいます。
オリーブオイルに次いでオレイン酸が多いのがキャノーラ油です。『J-オイルミルズ』のWebサイトによるとキャノーラ油の構成は
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