図解 ワイン一年生

ワインをいつも“勘”で選んでいるあなたへ。

ワインはそこそこ飲むけれど、いつも“勘"で選んでる。そんなプチワイン好きの人のために、とっつきにくいワインの世界を、図やマンガを駆使して「これ以上ないほどわかりやすく」解説するワイン講座です。「カベルネ・ソーヴィニヨン」「シャルドネ」「ピノ・ノワール」など個性豊かなぶどうを擬人化させ、味や香りの特徴をイメージで伝えます(毎週日曜日更新予定)



ワインは嫌いじゃない。

飲み屋でワインを注文することも、スーパーやデパートのワイン売り場に足を運ぶこともある。
でもラベルをながめてみても、一体なにが書いてあるのか解読不能……。
フランス、ドイツ、イタリア、チリ……国による味の違いがまったくわからない。
(千円のワインに比べて二千円のワインは、二倍おいしいの?)
値段の違いによる、価値の違いも見いだせない。
(か、軽めのやつで。あ、あんまり甘くないやつ)
店員さんやソムリエにワインの好みを聞かれても、戸惑うばかり。
(「金賞」「売れてます」って書いてあるから、これでいいか〜)
だから結局、いつもお店のおすすめPOPがついていたり、ワゴンセールされているものの中から適当に選んでいる。

わりとお酒が好きで長年飲んでいる人でも、“ワイン”とはそんな関係を続けている人が多いのではないでしょうか。
そんな人のために、この本は生まれました。

この本は生粋のアニメオタクからワインソムリエになり、いまは小さなワイン酒場のオーナーソムリエをつとめる筆者が、“ワイン”という西洋絵画のように複雑でとらえどころのない存在を、まるで八ビットのドット絵のように、オタク目線でおおざっぱに単純化して説明した、「ワインのことがなんとなくわかった気になる」ワイン入門です。

ワインなんて世界中どこでも、日常的に飲まれてるもの。
なんなら「お水」よりも安いものだってたくさん存在します。
そもそもぶどうは最初から糖分が高いものなので、ほうっておけば酒になる。
水分があって糖分があって、偶然、勝手にワインができていたのを猿が飲んでいたみたいな、そんな程度のものです。

だから本来、難しい知識が必要だったり、ハードルが高いものであるはずがないんです。
それでも「ワインってなんかとっつきにくい」印象があるのは、偉い専門家の方々が書いている入門書やガイドブックが、どれも「ちゃんとしすぎている」からではないでしょうか。

筆者も、ワインガイドブックに書かれていることの半分の知識も持ち合わせていません。
必要ないからです。
でも、うちのお店に飲みにくるお客さんに、ワインの魅力を語る上で困ったことはありません。

ワインの世界を理解するために必要なのは、正しい知識や歴史的背景ではなく“ときめき”だからです。
筆者はこの“ときめき”を伝えるために、全力を尽くしたいと思います。
ときめくポイントさえわかれば、“普通のワインガイドブック”の内容を楽に理解できるようになります。
この本はいわば、「ワインガイドブックのためのワインガイドブック」のようなものなのです。

そもそもワインの味というものは難しいのでしょうか。

うちのお店にくるお客さんの中には、「他のお酒には好みがあるが、ワインの違いだけはよくわからない」という方がたくさんいらっしゃいます。
なぜでしょうか。
ソムリエの資格を持つ筆者も、味覚についてはまったく自信ありません。
実はビールと発泡酒、第三のビールの違いもわからないし、食べ物はなんでも「塩辛ければおいしい」と思っています。彼女の手料理を絶賛したら、インスタントだったなんてこともあります。
そんな筆者でも「ワインの味はどれも全然違うよ!」と断言できるのです。

たしかにワインは非常に種類が多いです。世界には何十万種類もあるともいわれています。
それでも「主要キャラの特徴」さえつかめば、ワインの違いはちゃんと楽しめるようになります。
シリーズ途中から観はじめたアニメは、なかなかその世界に入っていけないものですが、主要キャラの性格や役割、お互いの関係などを知るうちに、だんだん全体像が見えてきます。
ワインに広がっている世界も、おおよそ、その雰囲気に似ているのです。

ワインにもちゃんと“主要キャラ”がいます。
やがてその“主要キャラ”の性格がわかってくると、ただお店にずらずらと並んでいたワインボトルたちが突然、あたかもお気に入りアニメのフィギュアに化けたかのごとく、きらきらと輝きはじめます。
そして一本一本に対しての愛情と、親しみと、興奮がわきあがってきます。
そうなってくるともう、うざがられるのを承知で、周囲の人たちに語り倒したくなってきます。

なにより筆者の思うワインの最大の魅力は、飲み手の人生の経験値がそのままワインの味に反映されることです。
たとえば筆者が二十歳の頃、たまたま【ラ・ターシュ】という高級ワインを飲ませていただく機会に恵まれたのですが、感想は正直「なんかすげえ感じするけど、よくわかんないや」でした。

ああ、なんてもったいないことをしたんだろう! 一本ウン万円もするワインを、「わかんないや」で切り捨てた筆者のバカ!です。
でも仕方ありません。ハイクラスのワインは、万人に「おいしい」わけではなく飲み手のレベルを求めます。
当時の筆者にとって、ラ・ターシュはあまりにも早すぎました。ファミレスの安ワインで十分満足だったのです。

そんな筆者でも、二店舗の飲み屋を七転八倒しながら経営し、人生の酸いも甘いも噛み分けつつある現在ならば、ラ・ターシュより数段格下のワインを飲んでも、もう三日三晩ぼーっとしてしまうほど感動することができます。
なぜそこまで感動できるのかうまく表現はできません。
ただ優れたワインなら優れたワインほど、それを飲んだ人の人生に刻まれた記憶を、たくさん蘇らせてくれるような気がするのです。

いろいろ勝手なことを申し上げましたが、長い人生、ワインを知らずに過ごしても、なんの問題もないでしょう。
それでも、もっと知ってほしいと思うのはなぜか?

それは知ってると、おしゃれじゃない?っていうことです。

(今日は久しぶりの仲間が集まるから、テンプラニーリョで盛り上がろう!)
ワイン売り場で、飲みたいワインを迷わず選べるようになったり……。

(二〇〇二年の【シャトー・カロン・セギュール】なら、さすがにこれくらいするよなー)
ワインの値段の価値がわかるようになったり……。

(ちょっと口の中をすっきりさせたいから、次はソーヴィニヨン・ブランで)
ワインバーで、ちょっと好みを言えるようになったり……。

(ペッパーチキンと、オーストラリアのシラーズを合わせよう!)
ワインをその日の気分や食べる物に合わせて選べるようになったり……。

ときどきそんな瞬間が訪れるたびに、自分のことを「おしゃれかも」と思えたりして、なかなか楽しいものです。

ぜひ一度、ワインの世界に足を踏み入れてみてください。
その小さな一歩が、人生をより複雑でややこしく、そしてちょっとだけ素敵なものにしてくれるはずです。


つづく

次回も『図解ワイン一年生』をよろしくお願いします。

*本連載は小久保尊・著『図解ワイン一年生』(サンクチュアリ出版)をcakes用に再編集したものです。

いま一番売れているワインの本!

図解 ワイン一年生 (SANCTUARY BOOKS)

小久保尊
サンクチュアリ出版; フルカラー版
2015-11-26

この連載について

図解 ワイン一年生

小久保尊 /山田コロ

ワインはそこそこ飲むけれど、ワインはいつも“勘"で選んでる。そんなプチワイン好きの人のために、複雑でとっつきにくいワインの世界を、図やマンガを駆使して「これ以上ないほどわかりやすく」解説するワイン講座です。かわいい高校生に姿を変えた「...もっと読む

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コメント

m_coyas この本のおかげで、何となくですが 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

onakapococo うちには、毎日木の実しか食べるものがないのに、やっすいシラーしか買ってこない父に、この本を買ってやろう。 https://t.co/9xuPP3hwgq 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

yehuda_feldmann コシェルかどうかという条件が入ると選択肢が非常にしぼられるから便利です(冗談)。 https://t.co/9UWitu1VA9 約1ヶ月前 replyretweetfavorite