私のいる福厳寺では、夜中に「ギャア!」というような断末魔が外から聞こえることがあります。
何事かと外へ出てみると、鳥が狐に食べられていたりする。羽が飛び散って、もがき苦しんだ形跡はあるのですが、遺骸は見つかりません。
私たちが、部屋でネットやテレビを見て喜んでいる。そのすぐ外には、死と隣り合わせの厳然たる弱肉強食の世界が存在しています。手負いになった動物は他の動物に食べられて、最後は微生物に分解されて土に還っていきます。人間も、さすがに食べられることはありませんが、自然の循環の中に取り込まれていて、いつか必ず死ぬという意味では例外ではありません。
にもかかわらず、私たちはあたかも死が訪れないような態度で生きている。理屈ではわかっています、いつか死ぬことを。ところが感情がついてこないんです。
死はできるだけ来てほしくない、遠くにあるべきもの。そして絶対自分にだけは訪れないもの。自分だけは病気にならないし、老いないし、死なないと思っている。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。