おもらし、出血……地獄の産後体験

中村綾花さんによる、フランスでの妊娠・出産の一部始終をお伝えするこの連載。事前の情報収集に努め、フランスでの無痛分娩に臨んだ中村さん。ついに我が子との感動の対面を果たしたと思いきや、さらなる試練が彼女を待ち受けていたのです。

十人十色すぎる出産体験

人によって違いすぎる妊娠、出産体験。とくに「分娩」の瞬間とまた違った辛さを経験したのが、出産直後の入院中の数日間でした。

いま振り返れば、どうしてこんなにも大変で、こんなにも個人差があるとんでもない体験について、事前に情報収集していたはずの私が知ることができなかったんだろう? ……と大きな疑問が浮かんできます。

ふんわりと、おめでたいイメージばかりがある妊娠、出産の裏には、「命がけ」という一言では語りきれない十人十色な体験があることが、案外知られていません。

出産後、子育てする中で出会ったフランス人、日本人のママさんたちに聞いてみると、中にはやはり大変な出産体験がトラウマになって、二人目以降の子どもを諦めたり、躊躇している人もいると知り強く納得しています。

実際、恋愛や結婚というものも、イメージするのと、体験するのとでは、これまた全然違うなといまだに日々驚いているのに、「妊娠、出産」はそれとは比べものにならないほどの「イメージと現実のギャップ」があるのです。

さて、出産や、その後の赤ちゃんとの対面、生活のなかで、なぜか感動できなかった、赤ちゃんをカワイイと思えなかった私の出産体験レポートも、いよいよ一番しんどかった地獄の数日間に突入します。

今回、血とか、おもらしとか、出産後の「こんなの聞いてなかったよ!」という生々しい体験描写が続くので、こういう話が苦手な方はご注意ください。さて、前置きはこのへんにして早速始めます!

灰色の洞窟の中にいるみたい

麻酔が途中で効かなくなった壮絶で長時間に及ぶ出産のあと、目すら開いてなく、乳首をくわえるのもおぼつかない小さな赤ちゃんと、分娩で全エネルギーを搾り取られたヘトヘトの私はパリにある国立病院の個室にいました。

この時期、パリは冬まっただなかだったので、朝でも昼でも、灰色のどんよりとした光しか差し込みません。まだ昼夜のリズムもつかめず、数時間おきに乳を欲しがって泣く赤ちゃんと二人で過ごしていると、薄暗い洞窟の中に取り残されたような寂しさと、どんよりとした疲労、そして不安感しかありませんでした。

それなのに、ときどきやって来る看護師さんや助産師さんは、毎度「おめでとうございます〜!」と声を上げながら部屋に入ってくるのです。

その都度私は、「ああ、そうか。母子ともにとりあえず無事に出産できてめでたい状況なのか……。でも、私はちっともお祝いできる気分やコンディションじゃないよぉ 」と、どうも居心地が悪くなるのでした。

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パリジャン十色

中村綾花

“花の都”と称され、雑誌やテレビでもその優雅なイメージが特集されることの多い、フランスの首都・パリ。パンやスイーツはおいしいし、ファッションは最先端だし、歴史ある建物たちも美しいし、住んでいる人もおしゃれな人ばかり……と思いきや、パリ...もっと読む

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