将来何になりたいでしょう?
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——わたしは将来何になりたいでしょう?
週に1度、私はスクールカウンセラーさんに会うため小学校に通っているのだが、その日は帰る時間がちょうど1年生の下校時間と重なった。
校門をでたところで「がくちゃーん!」と名前を呼ばれて、そちらを向くと近所の子どもたち6人が集団下校をするところだった。
私もその集団の最後に並び、1年生の女の子とお喋りしながら歩いて帰った。
その途中で、クイズをしよう、と女の子が言いだした。
——お花屋さん?
——ブーっ!
——ケーキ屋さん?
——ちがーう!
——トリマー?
保育園や小学校で、女の子たちに人気のある職業をいくつか挙げてみたが、どれも違うという。
——難しいな。ヒントちょうだい。
——ヒントは、服を作ったりする人!
——……デザイナー?
——正解!
家の近くの角で別れてからも、デザイナーなんてよく知ってるな、なんでデザイナーになりたいと思ったんだろう、としばらく気になった。
大きくなったら何になりたいですか、という質問を、子どもたちは折に触れて投げかけられる。
そのせいか、たとえば保育園の七夕の短冊などには「〇〇になりたい」というような「夢」を書く子どもたちが多い。
私の子どもたちも、「ケーキ屋さんになりたい」「お花屋さんになりたい」「保育園の先生になりたい」などと、そのときどきによってさまざまなものになりたがっているが、どこまでリアリティを持ってその言葉を発しているのかはわからない。
子どもたちにとっては毎日が新しい体験に追われるので精いっぱいで振り返る余裕すらなく、10年後、20年後のことなど、想像もできないほど遠い未来に思えるのではないか。
少なくとも私はそうだった。
1日の長さが今より遥かに長く、今とは比べものにならないくらいたくさんの出来事を経験していて、それらに向き合っているだけで当たり前のように時間が過ぎていった。
そうした時間は永遠に続くようにも思えて、いつか大人になるなんて信じられなかった。
いつか人を助けたい
photo by ハイドロカスタム on photo AC
とはいえ、子どもの頃からこんな仕事に就きたい、こんな大人になりたいというイメージを明確に持っていた、という人もいるだろう。
私は大学生の頃に、選択科目の体育で水泳の授業を取っていたのだが、ある日休憩中に60代前半くらいの水泳の先生と話していたときに、先生がこんなことを言いだした。
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