「夫婦円満のために夫はもっと共感力を磨くべき」と指摘するのは、恋愛セラピストの阿妻靖史氏だ。
阿妻氏によれば妻の一番の不満は「話を聞いてくれない」である。「俺は聞いている」という夫の反論が聞こえてきそうだが、「多くの男性は“表のメッセージ”しか聞いていない」と阿妻氏は警告する。

上図をご覧いただきたい。夫婦間でありがちな会話の例だが、妻の「最近、帰宅が遅いのね」という言葉の裏に潜んでいる、“助けて”というメッセージを読み取る必要がある。しかし、「大半の男性は“裏読み”を面倒がったり恥ずかしがったり、あるいは鈍感だったりして、言葉の裏をくんだやりとりができない」(阿妻氏)。それがコミュニケーション不足による関係悪化へつながっている。自我状態を親、子供、大人(おとな)に分類した心理学の「交流分析」から見ると、妻の表のメッセージが理論先行型である「大人」の状態からのアプローチ。それに対し、裏のメッセージは甘えたい願望など「子供」の状態から発せられているもので、優しい「親」の状態で受け止めてほしいという要求が込められている。
とはいえ、気のきいた返答はなかなか難しい。まず必要なのは相手の気持ちを受け止める、つまり共感することだ。阿妻氏は「まずは『頑張ってるね』と声をかけてあげよう」と促す。1文字違いだが、「頑張ってね」では共感したことにならないので要注意だ。
ケンカ突入の法則は
「批判→防衛→見下し」
妻の気持ちを受け止めずに反論するのはご法度だ。
夫婦関係を研究した米国の心理学者ジョン・ゴッドマンによれば、多くの夫婦ゲンカは「(1)批判→(2)防衛→(3)見下し→(4)決裂」のパターンをたどる(下図参照)。

例えば、第1段階で妻から「休日はゴルフばかりね」という批判がなされる。第2段階で夫が「仕事の一環だよ」などと防衛する。ありがちなやりとりだが、実はこのやりとりは既に関係決裂パターンに突入した危険な状態だ。その先は第3段階。「あなたは仕事しか取りえがない」「主婦は何もわかっていない」といった「見下し→決裂」が待ち受けている。逆にこのパターンへの突入を阻止すれば、大半の夫婦ゲンカは避けられる。
では、どのようにすればいいのか。まずは第1段階へ踏み込まないことだ。つまり相手を批判しないこと。具体的には主語が「あなたは」の苦情を言わず、「私は」を主語にした希望を伝えよう。例えば妻は「私は、休日には家族の相手をしてほしい」と言えばいい。
これに対して相手が批判してきた場合は防衛をしないほうがいい。上図にあるように、相手の要求の妥当性や実現可能性によって対応方法は異なるが、基本は防衛ではなく「受け止める」ことである。
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