減らさないと、始まらない
ここまでの話を読んで「ちょっと極端なんじゃないか」と抵抗を感じる方もいるかもしれません。そこまでして減らして、本当にその生活は楽しいのか、人とのコミュニケーションを大切にしていないようで、なんだか勝手に聞こえる、という声もあるかもしれません。それでも、あえてわたしは「減らす」ということのメリットを強くすすめます。
なぜなら、現代人は量に麻痺(まひ)しているからです。
自分がどれくらい食べたり、見たり聞いたり、買ったりしたら幸せなのか。どんな人と、どれくらいの頻度でコミュニケーションしたら疲れず、楽しめるのか。現代はあまりの情報量と、巧みな広告手法によってわたしたちの感覚は一杯いっぱいで、ずっとキャパオーバーしているのです。
そして減らすのは難しく、増やすのは簡単です。
仕事をハイハイと二つ返事で受けると喜ばれるし、美味しいものを食べてゴロゴロするのは至福です。大好きな漫画をネットで全巻買いしたり、可愛い家具を集めて最高の部屋を作ることだって一瞬です。でも、徹夜して仕事を終わらせるのは自分です。痩せようと思ったらその何倍もの時間と努力がかかります。本は場所を取るし、家具はいざ捨てようと思ったらさらに追加でお金がかかります。
これはベジタリアンになれとか、ミニマリストになれといった話ではなく、あくまでたとえです。でも「減らす」という難しさは、ありとあらゆる領域で同様なことが言えるのではないでしょうか。
そうして生まれた余白は、新しい可能性を呼び込みます。
大なり小なり、人は誰しもやり残したことを抱え、そしてそれを隠して日々の生活を送っています。それは子どもの頃に諦めた夢だったり、海外への憧れだったり、はたまた田舎でのんびりと過ごすことだったりと本当にさまざまですが、頭の片隅では「自分も」「いつか」「やってみたい」と端々で欲望を思い出しては「でも今は忙しいから」とその可能性に蓋をしてきたのではないでしょうか。
しかし余裕がなければ、変わるための時間そのものが足りません。
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