二〇二〇年は新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)という非常に大きな出来事があり、この原稿を書いている最中もまだ収束に至っていません。
春には会社や学校が休みになり、株価は大暴落しました。商業施設、飲食店、人々の生活にもさまざまな制限が出ましたね。
「こういうとき、修行を積んだお坊さんはどうするんですか?」と、たくさんの方々に聞かれました。覚(さと)っているから、動じないし恐れないと思われているようです。
「確かにその通り」と言いたいところですが、いいえ、そんなことはありません。 私だって未知の感染症は怖い。
でも、やみくもに恐れているわけではありません。かといって「恐れるに足らず」と豪語しているわけでもないんです。 「正しく恐れよ」ということが感染症対策の専門家の間で言われていましたが、仏教のお坊さんとしての私の答えもまさに同じ。これに尽きます。
例えるなら、自動車の運転のようなものです。車にはブレーキとアクセルがついていて、「危ない、怖い」と恐れてブレーキばかり踏んでいたらどこにも行けません。「このくらい平気だ」とアクセル全開でも危険です。恐怖を感じることも必要だし、 必要以上に恐怖に振り回されないことも大事なんですね。 どのように感染症を防ぐかの具体策については、手洗い、うがいのほか、それぞれに情報収集していただくしかありません。