「短気な性格で困っています。怒りを消す方法はありませんか?」
そんな相談が寄せられたことがあります。
ちょっと待ってください。そもそも、怒りってそんなに悪いものでしょうか?
怒りによる暴言・暴力は人を傷つけますし自分も傷つきますから明らかに良くないこと。でも、怒ったあなたが全面的に悪いかといえば、そうじゃない。 道を歩いていて、突然、ボールが飛んできたら瞬間的に目をつぶったり、身を縮めたり、避けたりするでしょう?
怒りは、生きていくのに必要な防衛本能です。 誰かの言葉や振る舞いに反応し、身を守ろうと出てくるのが怒りです。
問題は、怒りを消そうとしていることにあります。
私たちはつい、「怒るな」と抑えつけようとしますが、それは防衛本能の暴走に対して火に油を注ぐようなもの。実はこれ、本当に怖いことなんです。
仏教には、覚(さと)りを開くための具体的な道筋が、詳細な方法論として示されています。いわば「心の揺らぐことのない安穏(あんのん)」に向けての具体的なトレーニング。
怒りをコントロールするための仏教のトレーニングを「内観」と言います。坐禅や瞑想などによって自分の心の内側を見つめるというもので、最近では、医療やビジネスのケアにも現場レベルで応用されています。
ただ、内観にもたくさんの種類があるので、調べるほど混乱してしまうかもしれません。仏教が広まり受け継がれる中で、複雑化し混沌(こんとん)としているのも事実です。 それに、いきなり「瞑想して自分の内側を見なさい」と言われても、どうしたらいいかわからず、困ってしまう人もいるでしょう。 現代に生きる皆さんがわかりやすいように、工夫して要点を伝えていくことも、私たち僧侶の役割だと思っています。
では、大愚流の怒りを鎮(しず)める簡単な内観のやり方をお伝えしましょう。