0歳の頃から続けていた絵本の読み聞かせ
photo by ぷにすけ on photo AC
子育てをしていると、自分がどのように育てられてきたのか、育ってきたのかということに直面することがある。
親からされて嬉しかったことは子どもにもしてやりたくなり、そうではなかったこととは逆のことをしてやりたくなる。
子どもの頃、寝る前に本の読み聞かせを母親にしてもらっていたことをよく覚えている。
常夜灯のオレンジ色の光がやわらかく広がるなかに、母親の声とともに物語の世界が立ち上がり、登場人物たちが動きだす。
まるで目には見えない映画を見ているかのような、不思議な体験だった。
人間には肉体的、物理的な限界があるが、本を読むことによってその限界を突破して現実の領域を押し広げることができるのだ、ということをその体験は教えてくれた。
子どもたちが0歳の頃から寝る前に絵本を読み聞かせを続けてきたのはそのためだ。
最初は動物の絵に「わんわん」「バイバイ」のような簡単な言葉がついているだけの絵本を紙芝居のようにめくりながら見せていた。
少し大きくなると、言葉ではなく短い文章がついて物語が展開していくものを読むようになった。
気に入った絵本は何度も読んでとせがまれるので、私も子どもたちも内容を暗記してしまえるほど読み返した。
「ガロ」誌でマンガを読んでいた佐々木マキの絵本はどれも面白く、子どもたちにも人気が高かったのを覚えている。
離婚してからも読み聞かせの習慣は続けていたが、長女が小学校に上がる頃から子どもたちが自分で本を読むようになったので、読み聞かせの時間は自然消滅してしまった。
代わりに、一緒にアニメを観るようになった。
最初はプリキュアやディズニーアニメを観ていたのだが、去年の夏頃に「鬼滅の刃」を観たのをきっかけに、さまざまな作品に触れるようになった。
作品を選ぶのは私で、子どもたちはアニメだというだけで抵抗なく観てくれるし、たいていは面白がってくれている。
作品を選ぶ基準は、優れた作品であるかどうか。
「本物」に触れさせたい
photo by Kazuya2078 on photo AC
長女が3歳の頃に、アンパンマンの映画を観に行ったことがある。
映画的な見せ場を作るためだろうが、ストーリーがよく練られていて、アンパンマンたちとバイキンマンのバトルも迫力があるのだが、いまいち心に残るものがなく、退屈だった。
長女は食い入るように映画を観ていたが、帰り道に何か感想を口にすることはなく、家に帰ると「白雪姫が観たい」と言いだした。
1950年代のディズニーアニメのDVDが10枚3000円で売っていたので購入し、毎日のように観ていたのだが、そのうちの1枚だった。
70年近く前の作品とは思えないほどの作画の流麗さと独自性に、私は改めて胸を打たれた。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。