スカッとするよりも大切なこと

ここは、カフェ「しくじり」。都会の喧騒を離れ、一見さんお断りの限られた客のみ入店できる会員制のカフェ。
このカフェでの通貨は「しくじり」。客がマスターにしくじり経験談を披露し、その内容に応じてマスターは客に飲み物や食べ物を振る舞う。 マスターの小鳥遊(たかなし)は注意欠如・多動症(ADHD)の傾向を持ち、過去にたくさんのしくじりを重ねてきた。しかし“ある工夫”で乗り越えてきたという不思議な経歴の持ち主。そんな過去の自分と似た「会員」のため、今日もカフェのカウンターに立つ。 そんな奇妙なカフェのお話。

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(カラン、コロン〜♪ カラン、コロン〜♪)

りんだ 「……。」

小鳥遊 「りんださん、いらっしゃいませ。少し元気がないようですが…」

りんだ 「小鳥遊さん、私またやってしまったような気がします……ストレートな物言いをする後輩にうまく指導できなかったんです」

小鳥遊 「フフフ、ありがとうございます。いいしくじりの予感がします。じっくり聞かせていただきますね」

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りんだ 「その後輩は、竹を割ったような性格といえば聞こえはいいんですが、ちょっと表現がストレート過ぎるんです」

小鳥遊 「どんな風にストレートなんでしょう?」

りんだ 「去年末のことです。お客様に『勝手に鏡開き』という当社の製品をご紹介していたんですね」

小鳥遊 「勝手に……鏡開き? どんなものですか?」

りんだ 「簡単に言うと、鏡開きの日にホログラムの神様が現れて、神様が『よきかな、よきかな』と言うタイミングに合わせて勝手に割れる機能のついた大きなお餅の塊です」

小鳥遊 「それはまた御社らしい変な……いえいえ、個性的な商品ですね」

りんだ 「ええ、『割れる手間が省ける』と多くのお客様に好評いただいてるんですが、あるお客様のところにうかがった際、後輩がちょっと言い過ぎてしまって、怒らせてしまいました」

小鳥遊 「血気盛んな後輩さんなんですね。どんな言い方だったんですか?」

りんだ 「きっかけはお客様の『それにしてもこの神様の機能は必要あるのかねぇ?』という言葉でした。後輩は神様のホログラムにこだわっていて、技術者と一緒にその仕組み作りにとても力を入れていたんです」

小鳥遊 「なるほど。頑張って作ったところを否定されて反論したくなったわけですね」

りんだ 「おそらくそうだったんだと思います。そこで後輩は『鏡開きに神様がつくのは当たり前のことです』と言い、お客様をムッとさせてしまいました」

小鳥遊 「たしかにストレートな言い方ですね。ムッとしたお客様へのリカバリー対応、大変だったでしょうね」

りんだ 「ええ、まぁ、結局お買い上げいただけたんですけどね」

小鳥遊 「ど、どういう展開……?」

りんだ 「それは私の機転でカバーしたんですが……そこで帰り道に後輩に教えなきゃいけないと思ったんです。でも、後輩の言うことにも一理あるかなと思ってしまって、うまく教えられなかったんです」

小鳥遊 「なるほど。その素晴らしい機転は気になりますが、とにかく大変でしたね」

りんだ 「後輩育成のしくじり、どうすればよかったんでしょうか」

小鳥遊 「まぁ、ちょっと季節外れですがとりあえずお汁粉でもいかがですか?」

りんだ 「ありがとうございます!」

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りんだ 「お汁粉は、お餅を引き立てますねー! とてもおいしいです」

小鳥遊 「ありがとうございます」

りんだ 「今回の私のしくじりに関するヒントは、もしかしてこのお汁粉かしら?」

小鳥遊 「そうです。さすが、察しがいいですね。どういうことだと思いますか?」

りんだ 「おそらく、お餅だけではなく、あんこの汁を一緒にすることでお餅がドンドン食べられる! ということだと思うので……」

小鳥遊 「はい、いい線いってます」

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カフェ「しくじり」へようこそ

小鳥遊 /りんだ

発達障害でありながら一般企業に勤める小鳥遊(たかなし)さんが、カフェのマスターに扮して仕事の悩みに答えるストーリー連載。「安心して仕事ができるようになる、安心して会社に行けるようになる」を目指す、世界でいちばん意識低い系のビジネス連載です!

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