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(カラン、コロン〜♪ カラン、コロン〜♪)
りんだ 「……。」
小鳥遊 「りんださん、いらっしゃいませ。少し元気がないようですが…」
りんだ 「小鳥遊さん、私またやってしまったような気がします……ストレートな物言いをする後輩にうまく指導できなかったんです」
小鳥遊 「フフフ、ありがとうございます。いいしくじりの予感がします。じっくり聞かせていただきますね」
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りんだ 「その後輩は、竹を割ったような性格といえば聞こえはいいんですが、ちょっと表現がストレート過ぎるんです」
小鳥遊 「どんな風にストレートなんでしょう?」
りんだ 「去年末のことです。お客様に『勝手に鏡開き』という当社の製品をご紹介していたんですね」
小鳥遊 「勝手に……鏡開き? どんなものですか?」
りんだ 「簡単に言うと、鏡開きの日にホログラムの神様が現れて、神様が『よきかな、よきかな』と言うタイミングに合わせて勝手に割れる機能のついた大きなお餅の塊です」
小鳥遊 「それはまた御社らしい変な……いえいえ、個性的な商品ですね」
りんだ 「ええ、『割れる手間が省ける』と多くのお客様に好評いただいてるんですが、あるお客様のところにうかがった際、後輩がちょっと言い過ぎてしまって、怒らせてしまいました」
小鳥遊 「血気盛んな後輩さんなんですね。どんな言い方だったんですか?」
りんだ 「きっかけはお客様の『それにしてもこの神様の機能は必要あるのかねぇ?』という言葉でした。後輩は神様のホログラムにこだわっていて、技術者と一緒にその仕組み作りにとても力を入れていたんです」
小鳥遊 「なるほど。頑張って作ったところを否定されて反論したくなったわけですね」
りんだ 「おそらくそうだったんだと思います。そこで後輩は『鏡開きに神様がつくのは当たり前のことです』と言い、お客様をムッとさせてしまいました」
小鳥遊 「たしかにストレートな言い方ですね。ムッとしたお客様へのリカバリー対応、大変だったでしょうね」
りんだ 「ええ、まぁ、結局お買い上げいただけたんですけどね」
小鳥遊 「ど、どういう展開……?」
りんだ 「それは私の機転でカバーしたんですが……そこで帰り道に後輩に教えなきゃいけないと思ったんです。でも、後輩の言うことにも一理あるかなと思ってしまって、うまく教えられなかったんです」
小鳥遊 「なるほど。その素晴らしい機転は気になりますが、とにかく大変でしたね」
りんだ 「後輩育成のしくじり、どうすればよかったんでしょうか」
小鳥遊 「まぁ、ちょっと季節外れですがとりあえずお汁粉でもいかがですか?」
りんだ 「ありがとうございます!」
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りんだ 「お汁粉は、お餅を引き立てますねー! とてもおいしいです」
小鳥遊 「ありがとうございます」
りんだ 「今回の私のしくじりに関するヒントは、もしかしてこのお汁粉かしら?」
小鳥遊 「そうです。さすが、察しがいいですね。どういうことだと思いますか?」
りんだ 「おそらく、お餅だけではなく、あんこの汁を一緒にすることでお餅がドンドン食べられる! ということだと思うので……」
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