社会はデコボコな人たちの集まりだからこそ生きていられる

今週から木曜日にお引越しした「幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。」。今回は過去に一度相談を送ったという相談者。採用されなかったものの、送ったことをずっと後悔していたといいます。そんな彼女からの相談に、幡野さんはなんと応えるのでしょうか。

※幡野広志さんへ相談を募集しています。専用フォーム(匿名可)からご応募ください。

幡野さん

いつもTwitterや本で、厳しい言葉や温かい言葉を見て、少し悲しくなったり、勇気や優しさをもらったりしています。ありがとうございます。

私は今心理士として働いていて、社会で生きにくさを抱えている人と一緒に、困ったり泣いたり笑ったりしています。

以前、幡野さんに、「私は小さい頃に父を亡くし、母が悲しむ姿を見るのが辛かったから、心理士として癌患者の支援をしていきたい。だけど、それを言ったら母や姉が心配する、だから言えない。どうすればいいか。」という相談をしてしまいました。

癌を抱えて生きている、大事な奥さんやお子さんがいる幡野さんに、なんて言葉をぶつけてしまったのかと思います。ごめんなさい。 人の気持ちに寄り添う心理士という職業に就いているはずなのに、顔が見えない大好きで尊敬している相手に、1番聞いてはいけないことを聞いてしまった。 今の今までそんなことには気づけなかった。情けなくて、悲しくて、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

自分のことで頭がいっぱいだと、相手の顔が見えていないと、一番聞いてはいけないことを聞いてしまうのかもしれないです。

私は、顔の見えない、名前も知らない相手に、忌憚のない意見を言える幡野さんが羨ましかったんだと思います。

私は、大好きな人を大好きでいたいのに、どうして嫌いなところが見えてしまうんだろう、と考え続けていました。嫌いな面が見えてしまうのは、自分に足りないものを持っているから、羨ましくてたまらないのかなと思います。 大好きな人は、私が笑うときに一緒に笑ってくれるから、悲しいときに一緒に悲しいと感じてくれるから、好きでいられるのかなと思います。

私は自分のことを好きになりたかった、他の人を羨む自分が憎かった、大事に思えば思うほど、素直になれない自分がとても嫌いでした。 だけど心理士になり、大切な気持ちや考えを教えてもらう中で、自分のことも少しずつ好きになってきました。

結局自分のことしか考えられてないのかもしれません笑

私は幡野さんと、このメッセージを見てくれている人に謝りたくて、もう一度自分のことを送らせて頂きました。 だけど、あのメッセージを送る場所があったことで、自分は確実に救われた。だから後悔はしてません。

幡野さんの写真も言葉も楽しみにしています。たくさん笑って過ごしてください。辛いと思うことからは逃げてください。幸せでいてください。

(ゆうこ 26歳 女性)

あぁ、つまりあなたが最初に送ってくれた悩みの内容が、ぼくの視点にたつと、ぼくが死ぬと妻が悲しんで、それをみた息子が辛いおもいをする。息子が周囲の人の顔色をうかがってしまい自由な選択肢も選びにくくなる。というニュアンスだったってことですよね。

ぼくに心理的な負担をかけてしまったことを、あなたは心配されていて、心理士として情けなくも感じていたり、申し訳なさを感じているわけですよね。気にしなくて大丈夫ですよ。こういうことにはもう慣れました、それくらいのことは日常茶飯事すぎて、あるあるすぎる話です。

先日こんなことがありました。街で僕を知っているという高齢の女性に声をかけられて、その女性の旦那さんが、ぼくとまったくおなじ病気で最近亡くなったといわれたんです。病気が判明してから、1ヶ月ぐらいで亡くなってしまったみたいで、おばあちゃんはとても悲しんでいました。

そのおばあちゃんは、長年連れ添った旦那さんが急に亡くなってしまったので、まったくおなじ病気のぼくと旦那さんを重ねてしまったのかもしれません。おばあちゃんは「あんたとおなじ病気で死んじゃったのよ! あっという間に死んじゃったのよ!! 死んじゃったのよ!!!」と、すこしパニックにも近い状態で、ぼくとおなじ病気で死んじゃったことを強調してきたんです。

グフゥ、もうやめてくれ……ぼくはいま死んでしまいそうだ、おなじ病気のぼくに、おなじ病気の人が死んだ話をしないでくれ、とおもいながら、ぼくは自分の心を守るために現実逃避をしたんです。美味しいお肉選手権を頭の中で開催しました。優勝は牛タンでした、準優勝はハラミ。カルビはどんな特上でも年齢的にもう脂がキツかったです。

特上カルビの脂とおばあちゃんの話に胃がもたれながら、「それは大変でしたね」と声をかけました。おばあちゃんはおばあちゃんで、とてもつらかったとはおもうんだけど、ぼくはぼくでつらいんですよね。カルビの脂じゃないですよ、ご主人が亡くなった話ね。

医療従事者の人って、よく「患者さんに寄り添う」なんてことをいいますけど、現実的には患者さんに寄り添えている人はとても少ないとおもいます。自分が患者さんに寄り添うというよりも、患者さんを自分に寄り添わせてしまっている人のほうが体感的には多いと、ぼくは感じています。

でも、そういうものでしょう。医療者の技術と知識と経験が患者には必要で、患者の判断や意思表示が医療者には必要です。お互いが消極的になるよりもずっといいとおもいますよ。ちょっとお節介なぐらいでいいとおもいます。たとえば薬剤師さんってまさにそうでしょう。薬剤師さんって、処方箋があるのに症状とか常用薬とかお薬手帳があるかとかいろいろ聞いてきて、ちょっとお節介っておもわれがちだけど、薬剤師さんが消極的になったら怖いよね。

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幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。

幡野広志

写真家・幡野広志さんは、2017年に多発性骨髄腫という血液のガンを発症し、医師からあと3年の余命を宣告されました。その話を書いたブログは大きな反響を呼び、たくさんの応援の声が集まりました。想定外だったのは、なぜか一緒に人生相談もたくさ...もっと読む

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restart20141201 ゛自分がしあわせになることが、一番みんなをしあわせにするんですよ。゛ ヒリヒリする。 |幡野広志 @hatanohiroshi |幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。 https://t.co/JoUSLYQnnB 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

gibbous_leo ▶️ 人に寄り添おう、なんていうこと自体がすでに思い上がりの勘違いかもしれません。 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

2525415mi 脳内美味しいお肉選手権の優勝準優勝が完全に一致!! 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

ohtsumiki 「自分がしあわせになることが、一番みんなをしあわせにする」 大人も子供も、みんながのびのびと生きられたらいいよね。 約2ヶ月前 replyretweetfavorite