自分を縛っているルールを書き出す
人は想像以上に、自分にさまざまなルールを課しています。
こういうことをしてはいけない、ああいう行動はダメ。それは社会的な規範であったり、誰かから植え付けられた呪(のろ)いの言葉であったりもします。厄介なことにこのどれもが無自覚なことがほとんどで、わたしたちは知らずしらずのうちに自分で自分をがんじがらめにしています。試しに、自分がしてはいけないと思っていることをセルフノートに書き出してみましょう。
わがままを言ってはいけない
仕事は休んではいけない
自分でできることは自分でしなければいけない
ルールは守らなければいけない
真面目でちゃんとしている人ほど、内なる無自覚のルールが多い傾向があります。時には複数のルールが複雑に絡まり合って、より息苦しくなっている場合もあります。これは普段こそ口には出さないし意識もあまりないモノですが、それでも確かに自分の中に根源的に存在しています。そして無意識に、日々の行動や判断へ強い影響を与えているダークホースでもあります。
制約が多いと、何事も「やる」ことすら難しくなってしまいます。
例えば「走ってみよう」と思ってとりあえず走ることはできそうですが、「秒速3メートルで足の歩幅を50センチ以内に固定しながら、道路の右隅から30センチをキープして走ろう」と思って走るのとでは、投げ出したくなる度合いが全く違うと思います。程よい制約はトレーニングの負荷と一緒で程よい効果を発揮しますが、ミルフィーユのように重なったルールの下では「わたしにはできない」と思ったり、何か困っても「他にもう方法がない」と絶望してしまいます。
内なるルールが言語化されたら、「本当にだめなこと?」と、もう一度自分に聞いてみましょう。守らなかったら、どんなことが起きそうですか。本当に最悪の場合を想定すると、どんなことが起きそうでしょうか。逆にそのルールを撤廃したら、新しく挑戦できることや別の手段が見えることはありませんか?
そんな想像や返事を、これまた赤ペン先生方式で書き付けてみましょう。
一通り出し終わったら自分に必要なルールだけを残しても大丈夫です。でもはっきりとした理由がなかったり、誰かに言われたままとりあえず守っていたような邪魔な内なるルールは赤ペンで大きなバッテンを付けておきましょう。身動きがしにくいなと思ったら「何か変なルールを作ってないかな」と、ゆっくり自問自答してみてください。
そして何度でも、そのルールを撤廃してみてください。
自分を褒める
えらい、すごいね。
幼い頃、両親はいろんなことでわたしを褒(ほ)めてくれました。なんだか得意になって、それだけで気持ちよく眠れた気がします。
褒められるという行為はとても当たり前のようで、大人の誰しもが飢えていることの一つのようにも思います。会社では注意されたり叱られこそするものの、褒められることは圧倒的に少ないのではないでしょうか。日本では奥ゆかしさが美徳とされ、謙虚であることがデフォルトになっています。たまに周りが「すごいですね」なんてうれしい言葉を投げてくれても「いえいえ自分なんか」と謙遜し、せっかくいただいた言葉を丁寧に差し戻すことが多いのではないでしょうか。
しかし言葉というのは、積み重なると本当のことのように思えてしまう危うさがあります。自己暗示なんていう言葉もあるくらいですが、人は思った以上に自分の認識に縛られて生きています。人様向けに発した「自分なんか」「わたしなんて」「大したことありませんよ」の言葉が月日をかけてじわじわと意識に染み込み「本当に自分は大したことないのかもしれない」と、知らずしらずのうちに脳内で事実にすり替わってしまうことがあります。
そこでまず、褒められる機会を増やしましょう。
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