人手不足業界を中心に蔓延
「名ばかり正社員」にご用心
ジャーナリスト・藤田和恵
千葉県の高齢者施設で働くタクマさん(43、仮名、以下同)は、約束の時間に1時間以上遅れて現れた。「夜勤スタッフが急病で、代わりを探していたんですが、この後、私が戻ります」。
勤続5年目の正社員で、肩書は「管理者」。ただ人手が足りないので、経理やシフト作成といった管理業務に加え、介護や送迎もこなす。この日のように、急きょ夜勤に入ることも、たびたびあるという。
ただ、残業代などが支払われたことはない。月収は18万円。時給に換算したら、確実に最低賃金を下回る。
大学卒業後、ずっと正社員として働いてきた。そのほうが身分も待遇も安定すると思ったからだ。しかし、営業ノルマの厳しさなどで、何度かの転職を経験した。介護の世界も想像以上にきつかった。
最近ネット上で、以前勤めていた会社が契約社員を募集しているのを見つけた。「まさに私の担当していた業務で、複雑な気持ちになりました。正社員にこだわるのはやめます」とタクマさんは言う。
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