体の声を聞きながら、あらゆる選択をしていきたい

見る、聞く、触る、嗅ぐ、味わう、という五感を奪っていったコロナウィルス。それは今までに経験していないタイプのストレスでした。きっと今年のどこかで終わってくれるんだろうと期待しつつも、まだ終わっていません。そんな時代に蘭ちゃんが、今年は「体験」をしていきたいと書いています。同じ空間にいる(ある)ということがこんなに価値のあるものだったなんてね。連載第45回(毎週火曜日更新)です。

サクちゃんへ。

こんにちは。 京都はとても寒いです。一気に寒波がやってきた感じ。最近気圧も低くて、そのせいかちょっと気持ちが不安定です。苦手な年末年始中、ダウナーにならないようにとがんばりすぎて、今になって疲れが出たのもあるかもしれません。

年末年始は、ほとんど子供と過ごしていました。
何か正月らしいことをするかと思い、凧揚げをしたのですが、これが意外に楽しかった。わたしも走り回って揚げてみたりしたのですが、青い空にどんどん吸い込まれていく凧を見ていると、何も考えなくて良くて気持ちが良かったです。風に乗る、っておもしろいなと思いました。風がなければ作ればいいし、風が吹けば乗ればいいし、疲れたら休んだらいいし。人生に対する身の委ね方を学んだように思います。凧揚げは奥が深い。

ー・-・-

「蘭ちゃんは、今年なにか新しくはじめたいことはありますか?もしあれば、教えてください」
わたしは、今年は「体験」していきたいなと思っています。
コロナでなかなか難しくなってはいますが、なるべく予防はしながらも、できる範囲で外に出かけて、いろんな体験をしたいなと考えています。

だからって別に旅行するとか、スキューバダイビングをするとか、そういう非日常に身を置きたいっていうわけではなくて。
行ったことのなかった空間に身を置いてみるとか、商品を手に取って質感や重量を味わってみるとか、人に会って目と目を合わせて話してみるとか、食べたことのないものを食べてみるとか、そんな日常レベルの話です。

コロナが流行りだしてそろそろ一年が経ちますが、本当にオンラインでいろんなことができるようになりました。それはそれですごく助かったんです。家にいながら打ち合わせや取材ができるし、生鮮食品から衣料品から大型家具までなんでも買えちゃう。もともと出不精で面倒臭がりのわたしにとっては、本当にありがたい話です。

でも最近、タオルを買ったんですけどね。
この間サクちゃん、「家のタオルを全部変えた」って話していたじゃないですか。ふわふわの気持ちいいタオルにしたんだと。それを聞いて羨ましくなって、わたしもタオルを買おう!と思ったんです。

今うちにあるのは、ペラッペラの安物のタオル。気に入っているわけではないけれど、そこにあるから使ってる、みたいなものです。でもサクちゃんに「毎日使うものが気に入っているものだと嬉しいよ」と言われて、確かにそうだなぁと思いました。

それで、通販でタオルを探したんですよ。
でもタオルってめっちゃ種類があるんですよね。値段もピンキリだし、色も素材もとにかくいろいろある。じゃあ自分はタオルに何を求めているんだろう?って考えてみたんですが、「わたしはふわふわ寄りのさらさら派かも」とか「厚みはややありくらいかも」とか、まあ実際触ってみないとわかんないことばっかりなんですね。こればかりは写真だけではどうしてもわからないので、説明文やレビューをじっくり読み込んでみたりして。
結局、サクちゃんのおすすめの一枚と、「なんとなくこれかな」な一枚を通販で買って、使い比べてみることにしました。

それで届いたタオルを見て、その存在感にちょっと圧倒されてしまったんですよね。
事前にたくさん情報を得てはいたけれど、実物に触ったときの情報量たるや。重み、手触り、におい、大きさ、色味……全部体験しないとわかんないことだなと思いました。

そのとき、わたしは「最近、感覚で選ぶ」ということをしていたかな?と思ったんです。頭の情報量は多くなったけれど、五感の情報量は減っている。言葉や概念やデータに頼りすぎて、体で感じて選ぶってことがあんまりできていないなと思いました。

それって、結構危険なんですよね。言葉以上のもの、言葉からこぼれるものを自分で拾えなくなると危険。文章を書く仕事だからこそ、余計にそう思います。

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サクちゃん蘭ちゃんのそもそも交換日記

土門蘭 /桜林直子

東京でクッキー屋さんをしている「桜林直子(サクちゃん)」と、京都で小説家として文章を書く「土門蘭(蘭ちゃん)」は、生活も仕事も違うふたりの女性。この連載は、そんなふたりの交換日記です。ふたりが気が合うのは、彼女たちに世界の「そもそも」...もっと読む

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tomboy__7 サクちゃん蘭ちゃんのそもそも交換日記|土門蘭/桜林直子 "言葉のみに頼るということは、理解できる範囲の中だけで生きるということ。" https://t.co/1XGu1XIg9D 6ヶ月前 replyretweetfavorite

yorusube 「世界は、人間が理解できる範囲を超えているはずです。 言葉のみに頼るということは、理解できる範囲の中だけで生きるということ」 土門蘭 @yorusube /桜林直子 @sac_ring | 6ヶ月前 replyretweetfavorite