前回、マーケティングでユーザーの典型的な情報源や購買行動のパターンをモデル化する「ペルソナ法」を用いて、子供の転入学先の小学校を検討する保護者が、ウェブとクチコミで情報を集めている実態を明らかにした話をしました。その結果、より多くの生徒を集めるためには、検討中の保護者に対して直接インターネットで情報発信を行うだけでなく、今在学中の生徒の保護者に対しても「よそと比べて魅力的な学校だ」と感じてクチコミしてもらえるような工夫が必要だということが分かってきました。
そこで私が考えたのが、「PTA自身が、学校と保護者の間のITによるコミュニケーションのシステムを構築する」というアイデアでした。
実はインバウンドマーケティングの検討を進める前に、このアイデアの元となった、ある出来事がありました。それは、PTA会長になってすぐの私に、当時の教頭先生が「PTAとして、学校のIT活用を手伝ってくれませんか」と耳打ちしてきたことでした。
災害時に機能する「情報システム」を作れ!
皆さんもご存じのように、ちょうどその年の春、3月11日に東日本大地震が起きました。当日は都心に勤務する保護者の多くが帰宅困難に陥る一方、災害時の避難場所に指定されていた小学校には児童とその家族だけでなく、周辺の地域住民やたまたま近隣にいた観光客など多くの人が避難して来たため、深夜まで混乱が続きました。
しかし、小学校の電話回線は当然ながらパンクしてつながらず、学校からの緊急連絡メールで「子供たちは皆無事です」という連絡が来た以外、保護者はほとんど何の情報も得られませんでした。
地震当日の混乱が収まったあとも、水道管が破損して水の出なくなった住民向けに、小学校の校庭に自衛隊の給水車が来て給水活動なども行われました。しかし、学校の公式ホームページには「当面休校します」以外の情報が一切掲載されておらず、給水車の動向や地域内の安全情報なども保護者や地域住民にはまったく伝わりませんでした。
こうした状況に危機感をもった教頭先生が、「PTAで、いざというときの学校からの情報発信を請け負う体制を作ってほしい」と私に伝えてきたのです。
私はそのとき、「これは大変なチャンスだ」と思いました。というのも、それまで小学校のIT活用は上述のように不十分であるだけでなく、PTA自身がその取り組みから完全に「カヤの外」でもあったからです。
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