埴輪馬(はにわうま)の伝説
雄略九年七月一日、河内国(こうちのくに)から朝廷に、こんな報告がありました。
飛鳥戸郡(あすかべのこおり)※1の人・田辺史(たなべのふひと)※2のハクソン(伯孫)の娘は、古市郡(ふるいちのこおり)の人・書首(ふみのおびと)※3のカリョウ(加竜)の妻になっていました。
ハクソンは、娘が男の子を生んだと聞いて、婿の家に出かけて行って祝いました。
月夜の道を、家に帰る途中、蓬蔂丘(いちびこのおか)※4の誉田陵(ほむたのみささぎ※応神天皇陵)のふもとで、赤馬に乗った人に出会いました。
その馬は、時に竜のようにおどり上がるかと思うと、鴻(おおとり)のように跳ねとびます。
その異様な体格は、峰のように立派で、秀逸でした。
ハクソンは、すこし近づいてこの馬を見て、心のうちに、これを手に入れたいと思いました。そこで、乗っている葦毛(あしげ)の馬に鞭(むち)を当てて、馬の頭をそろえ、轡(くつわ)を並べました。
すると、赤馬は跳びあがって、あっという間に跡形もなく駆け去り、葦毛の馬は遅れてしまって、追いつくことはできませんでした。
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