一般的なストーリーの基本構成
第3章はいよいよ、ストーリーの根幹と言ってもいい「構成」についてです。
構成と言われて、一般的に思い出されるのは「起承転結」でしょうか。少し詳しい人なら「三幕構成」「序破急」のような型もご存知かもしれません。これらは言葉は違えど、共通しているところも多い概念です。ドラマや映画の世界では「三幕構成」という言葉が一番多く使われていますが、Wikipediaでは次のように説明されています。
第二幕「対立、衝突」:主人公が自らの目的を達成するために、その障害と対立、衝突する。第二幕の後半には、主人公が敗北の寸前まで追いつめられる。
第三幕「解決」:ストーリーの問い、すなわち「主人公は目的を達成できるのか?」という問いに対する答えが明かされ、その問題が解決される。
ここで一番重要なのは、第二幕のラストで「敗北の寸前まで追い詰められる」と書かれているところです。これを私は「ボトム」と表現しています。
つまり、ストーリーは、
・CQ(セントラル・クエスチョン)が提示され
・一度ボトムに落ち
・復活してクライマックスを迎える
という構造になっています。これは「起承転結」や「序破急」の場合も基本的に同じです。また、最初から下降していくようなストーリーは見ていて苦しくなるので、序盤は順調だけれど、あるところから「ボトム」に向かって落ちていくことが多くあります。
結果、これらをまとめると上の図のようになります。これが私が「ドラマカーブ」と呼んでいる、ストーリーの基本構成です。本によっては「感情曲線」と呼ばれたり、シンデレラのストーリーを引き合いに「シンデレラ曲線」なんて言い方をされることもあります。
私はこのドラマカーブで重要なポイントに7つの番号を振っています。
①CQ:CQの提示
②プチハッピー:CQの達成に向けて前進する
③ボトム:ドン底。CQがもはや達成できないくらいピンチ
④再起:何らかの転換点があり復活、再起する
⑤上昇:クライマックスに向かってぐんぐん上昇する
⑥クライマックス:CQの結果が出る。
⑦プラスα:伏線回収、どんでん返しなど
これを多くの人が知っていると思われる、日本の歴代映画興行収入ランキング第1位(2020年11月時点)の『千と千尋の神隠し』に当てはめてみます(ネタバレを含みますので、結末を知りたくない方はご注意ください)。『千と千尋の神隠し』は千尋という少女が、引っ越し先へ向かう途中に立ち入ったトンネルから、神々の世界へ迷い込んでしまうストーリーです。千尋は、人間の世界へ帰るために、湯婆婆の経営する銭湯で働きながら奮闘して、最後は無事に戻れるわけですが、『千と千尋の神隠し』のドラマカーブは次のように考えられます。
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