やる気はあるのに、仕事が終わりません

ここはカフェ「しくじり」。限られた客のみが入店できる会員制のカフェ。ここでの通貨はしくじり。客がしくじり経験談を披露し、その内容に応じてマスターは食事を振る舞う。 マスターの小鳥遊(たかなし)は注意欠如・多動症(ADHD)の傾向を持ち、過去にたくさんのしくじりを重ねてきた。 しかし“ある工夫”で乗り越えてきた不思議な経歴の持ち主。過去の自分と似た「会員」のため、今日もカウンターに立つ。 そんな奇妙なカフェのお話。

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(カラン、コロン〜♪ カラン、コロン〜♪)

りんだ 「う〜ん、仕事のスピードって、どうしたら速くできるんだろう?」

小鳥遊 「おや、仕事の進めかたフリークの私としては聞き捨てならない話題が聞こえてきましたね。りんださん、いらっしゃいませ」

りんだ 「小鳥遊さん、こんな話題に食い付いてきてくれてありがとうございます。実は、最近残業が多くて。昨日と一昨日は、終電も逃してしまったんです」

小鳥遊 「それは大変でしたね。ちょうどいいマグロを仕入れたんです。マグロをご馳走しますので、そのしくじり体験、じっくり聞かせていただきますね」

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小鳥遊 「それではマグロをご馳走します。さぁ、どうぞ!」

全長1メートル、100キロはゆうに超えるであろうマグロが、カウンターの台に鎮座している。

りんだ 「……いや、あの、小鳥遊さん。マグロをいただけるのは嬉しいんですが、目の前にマグロ一匹だけドンと出されても、どうすればいいか分からないです」

小鳥遊 「フフフ。それもそうですね」

りんだ 「……でもきっとお刺身とかにしたら美味しいんだろうなぁ!」

小鳥遊 「ええ、これはきっと美味しいですよ。では、これからこのマグロを解体しますので、ちょっと手伝ってくれませんか?」

りんだ 「ええっ? 一度やってみたかったんです。ぜひよろしくお願いします!」

小鳥遊 「それじゃ、まずは質を確認するために尻尾を切ります。この包丁で一思いにいっちゃってください!」

りんだ 「えいっ!」

小鳥遊 「おお、一発で尻尾を切れましたね。ほら、いい具合に脂が乗ってます。ここからはちょっと腕力が必要なので、私がやりますね」

そう言うと、小鳥遊は頭の部分を切り落とした。

小鳥遊 「ここは生では食べられませんが、ホホ肉などは焼くととても美味しいんです」

さらに、背中の部分を切り出し、次に腹の部分を切り離す。

小鳥遊 「この背中の部分が、一般に言われる『中トロ』、腹の端っこの白い部分が『大トロ』と呼ばれる部分ですね」

りんだ 「小鳥遊さん、いつのまにか日本刀みたいな包丁を持ってますね」

小鳥遊 「普通の包丁じゃあ切れないですからね」

そう言いながら、小鳥遊は、露出したマグロの骨にくっついている「中落ち」をスプーンで削ぎ取り、巧みに包丁を入れて骨をはがした。

小鳥遊 「これで解体は終わりですね。頭、腹、背中のそれぞれを使います」

小鳥遊は、赤身、中トロ、大トロに分けて一口大に切っていく。

小鳥遊 「まずは、それぞれの刺身の盛り合わせです」

りんだ 「わー! 美味しそう! いただきまーす!!」

小鳥遊 「それと、にぎり寿司です。こちらもたっぷり召し上がってください」

りんだ 「わー、そんなにすぐ食べ切れないです!」

小鳥遊 「いえいえ、ごゆっくり。この後は、ホホ肉のステーキもありますので、あまり食べ過ぎないようにしてくださいね」

りんだ 「ええっ、美味しくて、もう結構詰め込んじゃいました……」

小鳥遊 「美味しいと言っていただけて嬉しいです。ちょっと落ち着いてから、ホホ肉いきましょう」

りんだ 「ありがとうございます!」

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りんだ 「ところで、最初に話した私の悩みなんですけど…」

小鳥遊 「はい、仕事のスピードが遅くて終電も逃してしまったと言ってましたね」

りんだ 「そうなんです。どうしたら仕事のスピードが速くなるのか、どうしても知りたくて」

小鳥遊 「私も会社員時代に同じ悩みを抱えていました。終電で帰るには何時に会社を出ればいいのか覚えていましたね」

りんだ 「分かります! 今の私がそんな感じです」

小鳥遊 「それはちょっと気をつけた方がいいですね。りんださんは真面目で責任感もありますから、これからもっとたくさんの仕事を抱えることになります」

りんだ 「予言者みたいですね…でも、そんな気がします」

小鳥遊 「そうなると、終電を逃す日も今より多くなり、睡眠不足や不摂生がたたって仕事のミスも多くなります。それを取り返すために仕事にもっと時間をかけるようになる、という悪循環が生まれかねません」

りんだ 「それは避けたいです! どうしたらいいんですか!?」

小鳥遊 「ヒントは、『マグロ一匹』です」

りんだ 「マグロ一匹…?」

小鳥遊 「私がマグロ一匹をいきなりドーンと目の前に置いて『さぁ、どうぞ』と言ったとき、どう思いましたか?」

りんだ 「ええと、『どうすればいいか分からない』と思いました」

小鳥遊 「そこに、スピードアップのカギが隠されているんですよ」

りんだ 「ええっ、気がつきませんでした。もしかして、マグロに含まれる栄養成分のDHAですか?」

小鳥遊 「フフフ、たしかにDHAには脳細胞を活性化させる働きがありますが、そこではないです」

りんだ 「そうですよね。そうだったとしても、解体して切り分けなきゃ刺身にして食べられませんものね」

小鳥遊 「そこですっ!!!」

りんだ 「ひっ!」

小鳥遊 「いきなり大きな声を出してすみません。りんださん、今正解をおっしゃいました」

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カフェ「しくじり」へようこそ

小鳥遊 /りんだ

発達障害でありながら一般企業に勤める小鳥遊(たかなし)さんが、カフェのマスターに扮して仕事の悩みに答えるストーリー連載。「安心して仕事ができるようになる、安心して会社に行けるようになる」を目指す、世界でいちばん意識低い系のビジネス連載です!

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コメント

usagiuma 良く分かる。手をつけるまでに時間をかけすぎてるんだよなぁ。。。 https://t.co/t9i92YVwSE 3ヶ月前 replyretweetfavorite