フーテンの寅さんはなぜモテるのか(前編)

国民的映画「男はつらいよ」、そして「釣りバカ日誌」。主人公が周囲を明るく照らし、人を元気にする作風で人気だ。筑波大学の石隈利紀教授に、寅さんとハマちゃんの”援助者としての魅力”を解説してもらった。(前編)

 日本人であれば誰でも一度は見たことがあるだろう「男はつらいよ」と、「釣りバカ日誌」。いずれも数十年にわたってシリーズものとして製作され、高い人気を保っている映画だ。

 特筆すべきは、なんといっても魅力あふれる主人公だろう。欠点も多く、社会的にも成功しているとは言い難いが、天性の癒しキャラで周囲の人間たちが元気になるのを助けている。

 『寅さんとハマちゃんに学ぶ助け方・助けられ方の心理学』(誠信書房)の著者である石隈利紀・筑波大学人間系心理学域教授は、「寅さん、ハマちゃんの援助の仕方のエッセンスを取り入れることで、人間関係は大きく変わる」と話す。「男はつらいよ」の寅さんと「釣りバカ日誌」のハマちゃんはキャラクターも援助の仕方も大きく違う。それぞれどんな特徴があるのか、見てみよう。

「危機介入型」の寅さん

ハマちゃんは「共に遊ぶ」

 テキ屋稼業で全国を旅して回る「フーテンの寅」こと寅さんの援助の特徴は、一言で言えば「相手の世界に染まり、共感しようとする」姿勢にある。

 もちろん別個の人格があるのだから、他人を100%理解するのは不可能だが、「それでも相手をわかろうと、とことん努力する姿に、相手は癒される」(石隈教授)のだ。

 寅さんは旅先で、さまざまな女性(劇中ではマドンナ)に出会う。離婚をして経済的に苦しい中、なんとか新たな人生を切り開こうとしていたり、生き別れた兄弟を捜していたり、はたまた重病を患っているなど、彼らは人生の危機に陥っている。

 「暇だったらくさるほど持ってる。持ってないのはカネだけ」という寅さんは、「時間」という豊かなリソースを武器に、とことん相手の世界に染まり、共感し、そして相手の願いが叶うように全力でお世話をする。

 例えば、シリーズ第32作「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」では、マドンナの父親である寺の和尚が二日酔いになったため、代わりに袈裟を着て法事に行き、面白い法話をして大ウケになるというシーンが描かれている。相手の世界にスーッと風のようになじんでしまうのだ。

マドンナ(竹下景子)の父親である和尚の代わりに袈裟を着る寅さん(渥美清)。共感の才能にあふれている。『男はつらいよ/口笛を吹く寅次郎』 監督/山田洋次(1983)

 中学生のときに父親とケンカして家を飛び出した寅さんは、社会的に認められるものを何一つ持っていない。

 そのため、しばしば劣等感に苦しむのだが、石隈教授は「だからこそ、寅さんは弱い人間にも優しくなれるのではないか」と指摘する。

 自分の失敗談を話しながら相手を慰め、励ますのも寅さん流援助の十八番。自分の弱さを隠さず開示する寅さんの話は、苦境にあって心身ともに弱っている人でも抵抗なく聞け、生きる希望に変えることができるのだ。

 一方のハマちゃんは、寅さんのように丸ごと相手を受け入れるウエットな雰囲気ではなく、カラッとした楽しさに満ちた援助だ。例えて言うなら、寅さんは親が子供に愛情をかけるような密接な関わり方で、ハマちゃんは友人的な雰囲気なのだ。


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