今回から、「どのような金融商品」がおススメなのか、という話をしていきます。金融商品は、その仕組みをちゃんと理解すれば、よいものと悪いものを見分けることは難しくありません。
「よい金融商品」とはコストが安く、リスクとリターンのバランスが取れているもののことです。その一方で、“必ず儲かる”と宣伝しているものは必ず損することが多く、「買ってはいけない」商品です。この基本を確認したうえで、今回は保険の話です。
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保険とはいったいなんでしょう? これをひと言で説明すると、「不幸の宝くじ」です。 驚かれるかもしれませんが、保険の仕組みは宝くじとまったく同じです。
年末ジャンボ宝くじの1等前後賞を合わせた当せん金は6億円で、宝くじ代金は300円です。宝くじは10億枚以上販売され、そのうち6億円を手にできる幸運なひとは68人しかいません。それ以外にも2等3000万円(204本)などの高額賞金がありますが、宝くじを買ったほとんどのひとが外れくじを引くのは間違いありません。宝くじというのは外れたひとから当せんしたひとへのたんなる資金移動で、これは保険も同じです。
掛け捨ての生命(定期)保険は、10年間などの期限をあらかじめ決めておいて、その期間内に病気や事故で死亡した時に保険金が支払われます。日本の場合、60歳未満での死亡率は男性で9.2%、女性で5.1%で、40代や50代で死ぬことはきわめてまれですから、ほとんどは保険金を受け取らないまま満期を迎えます。これは宝くじが外れたのと同じですから、それまでに支払った保険料はすべてムダになってしまいます。
といっても、お金をドブに捨てたわけではありません。外れくじとなった保険料は若くして亡くなった方の遺族に支払われ、今後の生活を支えるのに役立てられたからです。宝くじと保険のいちばんの違いはここにあります。宝くじに当せんすればうれしいでしょうが、保険金は病気や事故など不幸なことが起きたときにしか支払われません。
保険金を受け取れなかったということは、満期まで無事に生きてこられたということです。その意味で保険は、「損をすることに意味がある」宝くじなのです。
生命保険はかなり特殊な金融商品
保険という「不幸の宝くじ」は、じつはかなり特殊な金融商品で、けっして万人のためのものではありません。どのようなひとが保険を必要としているのでしょうか?
生命保険に入るべきなのは、小さな子どものいる専業主婦家庭のように、一家の大黒柱にもしものことがあると残された家族が路頭に迷ってしまうようなひとたちです。一方、夫婦共働きだったり、結婚していても子どもがいなかったり、子どもたちがすでに成人していたり、生活を支えるじゅうぶんな資産があるひとは、そもそも生命保険に入る必要はありません。生命保険は、病気や事故など不慮の出来事で家計が破綻するリスクを分散するためのものなのです。
そう考えれば、生命保険に入るべきひとはごくわずかしかいないことがわかります。日本人は生命保険の加入率が高いことが知られていますが、その多くはムダなのです。
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