BABYMETALの躍進は海外戦略のヒントの宝庫だ
明治大学経営学部教授・大石芳裕
BABYMETALの世界的な人気を、日本特有の文化が受け入れられた結果と解釈する向きがあるが、私は違うと思う。注目すべきは、ヘヴィ・メタルという国境を超えた共通性だ。世界に広がるメタルファンという基盤に新しいポジションを築き上げたことが、大きなヒットにつながったのだ。
メタルはもともとロックから派生したジャンルで、個々の国においてはロックよりも小さい市場だ。だがそれらを足し上げてみると、無視できないニーズがあるとわかる。BABYMETALは神バンドのすばらしい演奏で世界のメタルファンのニーズを満たしているうえ、ポップなメロディとダンスというユニークさがある。音楽ジャンルは融合しないのが原則という欧米市場で、融合という新しさを持ち込んだことが現地の音楽ファンに大きな驚きをもって受け止められた。
この点においては、BABYMETALが世界の音楽市場にニッチな存在として登場したことは確かだ。だがニッチだから支持された、と考えるのは本末転倒だ。かつてソニーのウォークマンがそうであったように、斬新な商品やサービスは市場に登場した時点においてはすべてニッチだ。なにしろ、そういうジャンルが存在しないのだから。
問題はその時点でニッチか否かではなく、商品やサービスにベースとなる市場があるかどうか。ウォークマンであれば、音楽鑑賞という普遍的な市場が土台にあった。BABYMETALでいえば、仮に演歌とカワイイの融合であったなら、どんなにニッチで音楽性が高くても、世界的な広がりを持ちようがなかった。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。