ニナとわたしはタワーに戻った。
思った通り、ホセからはこっぴどく叱られた。てっきりクビになるだろうと思っていたが、ニナが泣いてわたしをここに置くようホセに頼んだらしく、わたしは追い出されずに済んだ。
ニナはわたしをますます側に置くようになった。
「このままずっと一緒にいてね、リタ」
それを聞くたびわたしは嬉しくなったが、一方でわたしがニナの元の身体の持ち主だとは伝えられずにいた。
あるとき、ニナはわたしに彼女の母親の形見である真珠のネックレスをくれた。
「たくさんあるし、あなたの好きなのを1つあげる」
似合わないし、もったいないから、と言って断ったが、ニナはいいの、と言って強引に真珠の束を押し付けた。
たくさんあるうちから1つ、迷った末に選んだ。1番小ぶりで控えめなものだ。ニナは嬉しそうにわたしに後ろを向かせ、首にネックレスをかけてくれる。合金アルミの寒々しいデコルテは、せっかくの真珠の光を素っ気なく跳ね返す。
「うん、似合うよ」
そう、ニナは言ってくれたけど、鏡の中に写るのは、相変わらず性別も判断不能なロボットの顔で、優しい風合いのパールは不釣り合いにしか見えなかった。
突然ニナが自室から出ることを禁じられたのは、それからすぐのことだった。
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