ニナが突然、街に行きたいからついて来て、と言い出したのはそのひと月ののちだった。
「16歳の女の子が遊びに行くような場所を見せて欲しいの」
わたしは二つ返事でOKした。このお嬢様が見たがるようなところを、数カ所車で巡って帰るだけだと思っていたのだ。〝車〟に乗るのも楽しみだった(乗り合いジプニーではなく)し、ずっとタワーの中にいるのも気が滅入る。
だから、繁華街のど真ん中で、ニナがいきなり運転手から鍵を奪ってドアのロックを外し、外へと転がり出たときにはわたしは呆気に取られるしかなかった。
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